2019 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設出身者の学生生活を支えるサポートブックの作成
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18K02439
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
上田 裕美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80302636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小崎 恭弘 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (20530728)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 児童養護施設 / 学生支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
児童養護施設出身の大学生への学生支援の現状と課題を把握し有効な支援の要因を明らかにするために、国公私立の4年制大学の学生部・学生課を対象に質問紙調査を行った。653校を対象に調査票を郵送し、131校から回答を得た(回収率は約20%)。調査の結果、児童養護施設出身者に特化した支援制度がある大学は9校であったが、約79%の大学が授業料免除の制度を、約86%の大学が各大学独自の奨学金制度を有していることが明らかになった。一方で、授業料免除等では成績要件も判断基準として重視されるため、心身の調子がすぐれない学生や不安の強い学生へのケアが課題として把握された。児童養護施設出身者等への学生支援で重要だと考える支援について尋ねた項目では、「奨学金や授業料免除などの経済的支援の強化と拡充」「学生寮等、安い費用で住める場所の紹介」といった経済的な支援に関わる支援の必要性が高く評価されたとともに、「担任やゼミ・研究室の教員と学生との信頼関係を深める」「就職対策や進路相談体制・機能を充実する」「カウンセラー等の専門家による援助や専門家との連携」「担任やゼミ・研究室の教員と学生との個別面談の機会がある」「キャリア形成を考える機会を提供する」といった項目の必要性も高く認知された。このことから、経済的な支援や住居の問題は生活していくための基盤として支援で欠かせないが、それに留まらず、学生生活上の悩みの相談や、将来へ向けたビジョンを一緒に考えてくれるような関わりがあることが重要であると考えられた。 うまくいった取り組みに関する要因としては、児童養護施設・担当職員のフォローがあったこと、施設職員と大学の教職員が連携して支援に取り組んだこと、施設職員と学生との関係が上手くいっていることが重要である、といった指摘があり、施設職員の理解やサポートと大学との連携は極めて大きな支えであると考えらえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、児童養護施設出身者への学生支援の現状と課題を把握することを目的に、全国の国公私立の4年制大学への質問紙調査を計画していた。653校を対象に質問紙を郵送した結果、131校から回答を得ることができた。結果については集計を終えたところであるが、今後より詳細に分析結果を読み解いていくことで、児童養護施設出身者への有効な学生支援を明らかにしていくことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2018年度に行った児童養護施設出身者当事者への調査の結果、および2019年度に行った大学への調査結果を詳細に分析すること、特色のある取り組みを行う大学への聞き取り調査を行うことを計画している。それらの結果を踏まえて、児童養護施設出身学生を支える支援のあり方への提言を行う。
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Causes of Carryover |
今年度に計画していた大学調査への回答数(調査の回収率)が見積もっていたよりも低かったため、調査結果の入力・分析のために見積もっていた費用に差額が生じた。未使用額は、今年度に追加で行った当事者を対象とした調査の入力・分析費用に充てたい。
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