2018 Fiscal Year Research-status Report
「遊びの質」を高める園文化に関するエスノメソドロジー研究
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18K02452
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
松永 愛子 目白大学, 人間学部, 准教授 (30461916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河邉 貴子 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20320806)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遊びの質 / 園文化 / エスノグラフィー / ネットワーク分析 / アクションリサーチ / 可視化 / 保育者研修 / 保育記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、国の保育の規制緩和により、園の運営体制が変化し、子どもの育ちが損なわれるのではないかと懸念されている。発達心理学の知見では、子どもの育ちには、遊びが重要とされている。そのため本研究は、幼児の発達を促す「遊びの質」を確保できる園条件を明らかにする。 現状、幼稚園教育要領には、「遊びの質」を確保するための視点が示されているが、その言葉の解釈は保育者によって大きく異なる。なぜなら保育者が「遊びの質」を判断する際、「園文化」(同僚、事例検討会、研修、保育記録、保護者等)の影響を無意識に受けているからである。「園文化」は、可視化・言語化が難しく「遊びの質」は、今まで十分に研究されてこなかった。 本研究は、「園文化」をとらえるのに適したエスノメソドロジー法により、日本の「遊びの質」の規準といえるA園と、最近「遊びの質」を意識し始めたB園の比較から、①「遊びの質」の発達過程、②「遊びの質」を高める同僚関係、研修、教材等を明らかにする。これにより、日本中の園に、「園文化」を自覚し改善する道筋を示すとともに、日本の保育のレベルの維持・向上に寄与したい。本年度、明らかにしたのは以下の点である。 (1)エスノメソドロジーの一種、アクションリサーチ法にネットワーク分析を取り入れる新たな研究方法について、論文にまとめた。これは、A園B園の遊びの質の比較や、保育者研修の効果測定の方法の一つとして活用できる。 (2)遊びの質を高める過程において、保育者が抱える課題として「外遊びと室内遊びの時間配分」、「行事による異年齢間の模倣の成立」、「日常的な室内遊びにおける学級内の模倣の成立」、「一斉保育と自由な遊びの時間の関連性」等があることが見出された。 (3)遊びの質を高める過程において、保育者同士の話し合いの時間の確保、子どもの遊びを継続的に観察可能となるシフト体制、等を実現する必要があることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)研究フィールド(A園、B園)との協力関係を構築できた。A園では2回の観察、観察結果をもとにした保育者研修を2回実施できた。B園では、年に6回の観察および、保育者研修を1回実施できた。同様に、園の保育者へのスーパーバイズを行う研究会を年に4回実施できた。 (2)アクションリサーチにネットワーク分析を取り入れる新たな研究方法について、論文にまとめることができた。これは、A園B園の遊びの質の比較や、保育者研修の効果測定の方法の一つとして活用できる。次年度以降の本格的なデータ収集と分析に役立てていく。 (3)保育記録、保育者同士の打ち合わせや振り返りの日常会話の収集を行った。これらのデータを、エスノメソドロジー法の一つである会話分析(CA)と、保育映像のネットワーク分析を組み合わせて「遊びの質」を分析する方法を考案中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)A園の取り組みをエスノグラフィーにまとめる。B園では、一斉保育から遊び中心の保育に切り替える際に様々な課題を乗り越えてきた。この歴史は、数値化できるものではないが、データを分析する際に重要な視点を提供すると考えられる。また、遊び中心の保育を志向する他園にも重要な示唆を与えると考えらえる。 (2)A園、B園にて継続的にデータの収集を行う。B園での研修の機会を増やし、B園の保育者同士の子ども観、保育観を言語的に共有するとともに、小川博久による「遊び保育論」をもとに保育者の身体知の変革を目指す。そのための園内の情報共有方法について、アナログ媒体、インターネット媒体等において検討する。これらの過程を記録し、成果も課題もエスノグラフィーにまとめていく。 (3)継続的なデータ収集を実施し、A園とB園の遊びの質の比較、および縦時的変化を実証的に分析し、現場に還元、論文にまとめていく。
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Research Products
(3 results)