2018 Fiscal Year Research-status Report
メンタリング・システムとしての「守姉」に関する研究
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18K02498
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
岩崎 美智子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (90335828)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 沖縄離島 / 池間民族 / ライフストーリー / 守姉 / 養護性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成30年度は、おもに資料収集と、対象地域である宮古諸島の歴史、文化・習俗、産業について検討し、あわせて守姉(モリアネ)・守子(モリコ)に対する個別のライフストーリー・インタビューを実施した。特に、宮古諸島のうち池間島、伊良部島佐良浜地区、宮古島西原地区に住む人びとが自らを「池間民族」と称することに着目して先行研究から学んだ。笠原が位置づけたように、信仰、年中行事、漁撈民族としての自己認識が「池間民族」の特徴であり(笠原 2008)、1930年代~40年代生まれの調査協力者たちの語りには、「池間民族」としての誇りが表れていた。1930年代生まれの女性へのインタビューから彼女の生活史を分析したところ、水くみと燃料集めに象徴される離島に住む女性の生活の厳しさと、敗戦間際の台湾疎開と帰島後の空襲、漁師の男性と対をなすかつお節製造の女工たちの「女宿」的な共同体の一面が明らかになった。 「守姉」経験者へのインタビューでは、年少の子どもの子守をすることによって世話する側の少女の「養護性」が形成されること、子どもの養育における社会的機能(Lewis,M.)5つのうち、子守の過程では行動としての「世話(caregiving)」も大事だが、言葉による愛情表現や非言語的なやさしさの表現とされる「養護(nurturance)」がもっとも多く語られたこと、長じて離れ離れの生活をしていても守姉‐守子関係は特別な関係が生涯継続されることから、双方が「表象」としての精神的拠り所となっていることが理解された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標としての、離島の歴史・習俗・産業に関する文献・資料収集と、「守姉」・「守子」への最小限のインタビューは実施することができた。しかしながら、調査協力者の大半が70代後半から80代であることから、病気や入院によりインタビューの予定が変更になったり2回目が実施できなかったなど想定外の事態が多発した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査経験により、調査協力者の多くが高齢であることから、詳細な個別インタビューを数回にわたって実施することが大変困難であることがわかった。そのため、2年目である令和元年度は、文献でカバーできる部分は確認にとどめ、インタビューでなければ聞けないことを聞くなど工夫をしていくつもりである。調査協力者については、当事者だけでなく、関係者へと対象を広げる必要があるかもしれないと考えている。 また、2年目は、ライフストーリー・インタビューの継続と並行して、メンタリング・プログラムに関する研究にも着手するが、1年目に収集したインタビューデータと照らし合わせて「異年齢ピア・メンタリング・プログラム」の有効性についても検証を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者が学内業務で多忙のため、2018年6月に参加を予定していたチェコ共和国での国際学会に参加できなかったことで、2人分の旅費が残り、繰り越すことになった。次年度は、ギリシャ共和国で開催される国際学会参加と調査を予定しているため、研究代表者と研究協力者2人分の旅費として繰り越し分を使用する計画である。
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