2018 Fiscal Year Research-status Report
「包摂と排除」の社会意識と社会科カリキュラムの改善に関する研究
Project/Area Number |
18K02546
|
Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
坂井 俊樹 開智国際大学, 教育学部, 教授 (10186992)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 裕一 千葉大学, 教育学部, 教授 (00216855)
鈴木 隆弘 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (40433685)
荒井 正剛 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40795712)
小瑶 史朗 弘前大学, 教育学部, 准教授 (50574331)
重松 克也 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (60344545)
小松 伸之 清和大学, 法学部, 准教授 (80609777)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 排除と包摂 / 格差・貧困・暴力 / 水俣病事件 / 大気汚染 / 公害 / 地域再生 / 社会意識 / 社会科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、5回の全体研究会(会場・東京学芸大学附属竹早中学校)を開催した。 研究計画にあった児童・生徒や教員へのアンケートについては、先行研究の精査に代えて実施しなかった。教育課題が山積した神奈川県立高校の元教員、福島県の教育関係者へのインタビューを実施し、地域社会や子どもたちの状況と課題を具体的に把握できた。申請書では、今日の新自由主義の競争社会のもとでの、子どもたちを捉える「勝者」としての社会意識と、「弱者」としての社会意識を調べ、それを改善していくことを目的としていた。この研究枠組みに対して、元教員へのインタビューや水俣病等の授業実践によって、一定度明らかにすることができた。 研究分担者は、各配分予算を活用し、「排除と包摂」にかかわる各地理・歴史・公民分野での理論的整理とともに実際にフィールド調査などを行い、現場状況の視点から報告し検討した。水俣病(熊本・新潟)、福島の放射能問題、四日市ぜんそく問題、イタイイタイ病問題なとが基礎研究として分析された。研究会には、研究協力者として小・中・高校の教員の積極的な参加もあり、テーマに即した研究的教育実践をいくつか展開した。これらについては、第一年次報告書として3月末に刊行した。 以上から、今日の新自由主義「包摂と排除」の視点を、どのように位置付けていくのかが一定度明確にされるとともに、分担研究者に課題意識が鮮明化・共有化され、それとともに実践研究との接点も図られるようになった。その点で、「包摂と排除」のカリキュラム構想検討の基盤が構築されたといえる。2年目は、具体的な地理・歴史・公民の領域からのカリキュラム案の検討と実践による子どもたちの社会意識の調査を進めたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度ということもあり、研究計画とは若干違う観点で、広くテーマに接近してきた。基礎的な生徒や教員に対する意識調査は、その有効性を改めて考え、今年度は十分に実施できなかった。しかし、複数の教員などからの聞き取り調査を実施し、量的ではなく、質的な意味での課題や要望を探ることができた。 また当初の研究目的に対して、新しく地理・歴史・公民領域のカリキュラム提案や小・中・高校での社会科授業を通して検討、接近することができたのは成果である。まだ理論的にはまとめ切れていないが、その基盤には各分担者が地域調査を丹念に進めたこと、また高校を中心とした教育現場での課題との接点を図ったことで研究が深められた。地域調査は、福島の被災地、ミナマタ病(熊本)および新潟水俣病、四日市ぜんそく関連、富山のイタイイタイ病などの調査報告と教育実践を数本、報告書としてまとめられた。報告書は、今後の研究の基盤になるものである。まだ地域調査および教育実践をつなぐ論理が定まっていないが、次年度に向けてかなり方向性と課題が確定できたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず研究分担者が、それぞれの地理・歴史・公民領域で、課題に応じて第一次カリキュラム案を作成する(当面6月末日まで)。それに合わせた実践プランを研究協力者が作成する。カリキュラムの検証を実践による実証と重ねて検証していく予定である。カリキュラム案は、「排除」と「包摂」であるが、そこには日本国内の格差・貧困問題、社会的事件などをはじめ、社会的諸問題・諸課題を巡る「排除」と「包摂」について検討していきたいと思う。授業分析は、子どもたちの社会意識を探るという観点から丹念に授業記録を採録し進める。さら水俣病事件や福島の被災の問題をはじめ、東アジアの共通の問題として位置付けていく予定である。実践については、今年度から幅広く小・中・高校で展開していただく予定である。 なお、公表機会として、9月には日本社会科教育学会新潟大会で、理論的枠組みやカリキュラム案、実践の一部を報告していく予定である。そこで私たちの議論の妥当性を確認する。 また年度末には2年度終了の報告書を作成予定で、カリキュラム原案と実践プランや子どもたちの社会認識について公表していく予定である。
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画の修正もあり、とりわけ大規模アンケ-トの実施、教員へのインタビュ-が縮小されたために、初年度予算執行が縮小した。しかしアンケートの未実施の部分的実施・前年度インタビュデータの文字起こしの未着手分がある。それの支出を考える。 あわせて地域調査資料の収集。学会発表のための旅費などの支出の増大が考えられる。とりわけ重点化したいのは、第一に、教育実践を広く展開するためにそのための教材作成費(研究協力者用)が相当に支出されると考えられる。第二に、またできれば韓国など、日本と同様の実情にある韓国社会の調査を実施したいと考えている。広く比較的な視点にたち研究代表者の専門とのかかわりで、日韓を中心に考えたいと思う。 二年目は、研究計画の中心となり、できるだけ研究協力者に対する配分を重視し、そのための予算を集中したいと考えている。
|
Research Products
(7 results)