2019 Fiscal Year Research-status Report
学校臨床問題における保護者と教師の連携プロセス-中間施設と専門職の役割-
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18K02586
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
東 宏行 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (00425373)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不登校 / いじめ / 学校臨床 / 連携 / 保護者 / 適応指導教室 |
Outline of Annual Research Achievements |
不登校に対応する中間施設を中心に現地調査を進めた。全国の教育支援センター・適応指導教室と民間の支援施設等の中間施設について実地調査を行い、その組織や運営、課題について、実践上の課題を抽出する作業を進めた。当該年度は、教員がどのようにかかわるシステムになっているのかを中心に資料を収集し、次年度の詳細調査を実施するための整理を行った。宮城県の民間支援施設、東京都および神奈川県の市区教育委員会の施設、静岡県の民間支援施設、沖縄県の教育委員会の施設について、現地調査を行った。 地域によって独自の特徴が見られたが、本年度注目した地域は沖縄県である。沖縄県は、2018年度の不登校出現率が高く、文部科学省公表データでは、小学校は全国1位、中学校は全国3位、高等学校は全国1位である。全国的に不登校児童生徒数が増加し、出現率が高くなる中で、小学校、高等学校の不登校児童生徒の出現率が最も高い県であることから、どのような取り組みや課題があるのかを、研究目的に絞りつつ実地調査を行った。その結果、沖縄県内5カ所の適応指導教室(中間施設)が取り組んでいる工夫や現状、課題の一端を知ることができた。特に、活動内容、教室の入室システム、学校と適応指導教室、保護者の間の連携において、興味深い工夫が見られ、課題も把握することが出来た。 また、神奈川県の中間施設も、注目に値する運営、教育活動が行われていた。市町村教育委員会で運営している適応指導教室であり、その支援活動への小中学校教員の参加率が極めて高く、保護者や保護者OBによる支援活動も展開していることが分かった。この活動の概略を把握できたことは大きな成果であった。その他の地域の中間施設についても分析を進めており、全国の教育支援センター・適応指導教室等の中間施設で、教師がどのようにかかわるシステムになっているのか、一定の類型化をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不登校児童生徒を支援する、教育支援センターや適応指導教室等の中間施設への実地調査に関しては、ほぼ予定通り進行していたが、新型コロナウィルス拡大の影響により、年度末期に予定していた3か所の実地調査やその他詳細調査を行うことができなかった。そのため、研究の進捗にやや遅れが出ている。 しかしながら、今年度は東京都、神奈川県、宮城県、静岡県、沖縄県にある中間施設の実地調査を行い、市町村教育委員会が運営する適応指導教室や民間の中間施設の制度運営上の実態や課題について資料収集をすることができた。いずれも「保護者と教師の連携」という視点で分析を進めているが、制度上の課題が大きいことが見えて来た。一方で、行事等を介して、教員と保護者のかかわりがつくられている中間施設も存在し、地域によって異なる面も明らかとなった。比較的小中学校教師のかかわりが多い中間施設では、その運営を指導主事等の専任教員が担っている点が特徴的であることも分かった。そうした組織上の事項だけが理由なのか、または他に要因があるのかを明らかにするため、さらに詳細調査を進める予定であったが、先の理由により、実施することができなかった。現在、上記の中間施設に関する詳細調査に向けて準備中である。 成果としては、研究実績の概要に示した通り、全国の教育支援センター、適応指導教室等の中間施設で、教師がどのようにかかわるシステムになっているのか、一定の類型化をすることができた。論文としてまとめるには至らなかったが、詳細調査の基礎を固めることが出来た。 以上のように、当初予定していたスケジュールで実地調査、資料収集は進んでいたものの、年度末期は中断を余儀なくされた。そのため、予定していた年度単位での成果を公表することができなかった。ただし、全体としては順調な進捗状況であったので、ここまでの結果をベースとして、研究の方向性を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
不登校児童生徒の支援にあたって、中間施設を介して教師の参加や保護者の支援活動が活発な施設の詳細調査を実施し、その要因を分析する予定である。また、地域によって差がある要因を分析して行くことも、並行して進める。 行事等を介して、教員と保護者のかかわりがつくられている中間施設に関しては、より詳細な調査と分析を進めて行く予定である。これまでの実地調査で、神奈川県の市町村教育委員会が運営している中間施設、名古屋市が運営している中間施設は、本研究課題にとって注目される活動に取り組んでいる。この2カ所の施設を中心に、成果をまとめていく予定で、必要に応じて参与観察やスタッフへの聞き取り調査等も随時検討する。 一方、2019年度、実地調査を実施した沖縄県についても、調査を継続する予定である。また、昨年度の課題となった、NPO法人による支援にも該当しない、不登校の子どもを持つ保護者による、地域での自主的な支援活動についての調査に関しても、一定の目途が立ってきたため、実地調査、参与観察、聞き取り調査を進める方向である。 ただし、研究を遂行する上での重大な課題がある。新型コロナウィルス感染症拡大に伴う状況に応じて、実地調査や聞き取り調査がどこまで可能か、未知数である。そのため、上記の方法では実施できない可能性も高い。 現在、研究方法及び研究推進スケジュールの変更を余儀なくされた場合の方策を検討中である。具体的には、実地調査や参与観察、聞き取り調査は断念し、質問紙を用いたデータ収集、電話等の通信手段を用いた聞き取り調査、公表されている紙媒体の報告書や電子データ等を用いて、研究を進めて行くことも検討する。当初予定していなかった方法ではあるが、状況に合わせ、できる範囲の方法で進めて行く。その際、新たな視点として、緊急事態による学校休業中の中間施設のあり方といった視点も付加して行く予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度年度末期における実地調査が、新型コロナウィルス感染症拡大によって実施することが出来なかったため、次年度に実施することとした。また、遠方への実地調査用に予算化していた空路旅費が、見積りよりも格安な航空券を購入できた。これらの理由により、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)