2018 Fiscal Year Research-status Report
幼小の接続期における数概念の育成を目的とした学習活動の開発
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18K02630
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮脇 真一 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (50803342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 信也 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (20145402) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数概念形成 / 学習活動 / 理論的枠組 / 実証的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は就学前と小学校低学年の算数を対象に,幼小の接続を図った数概念形成のための学習活動を開発することを目的としている.平成29年3月の学習指導要領改訂においては,学校段階間の円滑な接続が「その他の重要事項」の中で指摘されている.この学校段階間の円滑な接続について,幼稚園と小学校の段階では,教育振興基本計画の見直しやスタートカリキュラムの作成,指導者の研修など様々な取組がなされているが,「数概念形成」という数学的な内容からの取組は十分とは言えない状況にあり,本研究で子どもの数概念形成を意図した学習活動を開発することは,幼小の学校段階間の円滑な接続に向けて意義あることである. そこで研究初年度の平成30年度は,就学前教育と小学校教育の接続期における数や図形の学習の中から,数概念形成に焦点を当て,数概念形成のための理論的枠組を構築することを1年間の研究のゴールとした.そのために,幼小接続期に焦点を当てた国内外の先行研究の中から,ドイツの数学教育学者ヴィットマン(Wittmann. E. Ch.)らが開発した就学前教育のテキストブックである『小さな数の本(Das. kleine. Zahlenbuch)』について,その編集の理念や意図を調査するとともに,ドイツ語で記された教師用解説書を分析した. その上で,これらの調査および分析をもとに数概念形成のための理論的枠組を構築するとともに,その枠組に沿って幼稚園の年長児や小学校第1学年の初期の児童を対象とした3つの学習活動について,実証的研究を通して開発したことは,本研究の推進において極めて重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進めるにあたっては,まず,就学前教育と小学校教育の接続に関する無藤(2006)やClements(2001)らの先行研究,数概念形成という視座において,全米数学教師協議会の取組やドイツの幼児教育改革などの海外の先行研究,丸山(1999),河原(2016),船越(2010),松尾(2011,2012,2013,2014),中和(2014,2016,2017)らの就学前教育と小学校教育の接続に関する先行研究について,文献および論文を分析した.次に,ドイツの数学教育学者ヴィットマン(Wittmann. E. Ch)らが開発した幼児向けのテキストブックの分析とその背景となる理念について, 実際に研究打ち合わせを行い,理論的枠組の構築に向けた示唆を得た. これらの調査研究を通して得られた知見をもとに,幼小接続期の数概念形成に向けた理論的枠組を構築するとともに,その枠組に沿った3つの学習活動を開発した.そのうち2つについては,幼稚園(1園)および小学校(3校)で実証的研究を行い,その成果と課題を明らかにした. これらの成果については,平成30年6月の全国数学教育学会,同11月の日本数学教育学会にて口頭発表した.また,10月の新算数教育研究会の全国大会において,本研究の趣旨に沿った授業を特別授業として公開した.その上で平成31年3月には,本研究助成を受ける以前から取り組んできた研究を含め,学位論文として広島大学に提出した. 本研究助成における研究計画を立案した時点では,実証的研究は,幼稚園でのみ行うことを計画していたが,実際に研究を進めていく中で,小学校第1学年でも実現可能であることが分かり,幼稚園での調査に加えて小学校でも実証的研究を行い,そのデータを分析する中で,数概念形成のための理論的枠組の構築にとどまらず,学習活動を開発するための理念および条件まで提案することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,理論的枠組の構築,学習活動開発のための理念および条件を明らかにするとともに,小学校第1学年を対象とした3つの学習活動を開発することができた.開発した3つの学習活動のうち,2つについては実証的研究を通してその有効性と課題を整理することができているが,1つの活動はまだ計画が出来上がった状況にある.そこで平成31年度以降の研究推進にあたっては,次の2点に取り組むこととしたい. 一つは,先述した学習活動の小学校における実証的研究を行うことである.理論的枠組みに基づき,学習活動開発の理念および条件を満たした活動ではあり,子どもの数概念形成に向け,その有効性が期待できる学習活動である.本実証研究は,子どもたちが小学校に入学し,算数の学習を経験する初期の段階に焦点を当てていることから,時期を逃さずに実証的研究に取り組む予定である. もう一つは,新たな学習活動開発の可能性を探ることである.本研究で開発した学習活動は,算数の年間計画や短時間学習の計画など,カリキュラムに位置づくことを最終的な目標としている.学位論文には掲載しなかった学習活動の案も3つ構想している状況にあり,これらの学習活動の有効性を検討することが,今後の研究推進方策である.
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Causes of Carryover |
物品費について,当初予定していた金額より安く納入できたため90円の差額が出ました.次年度の物品費に加算して使用する予定です.
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