2019 Fiscal Year Research-status Report
多様性に富む共生社会構築に向けた小学校用「多様性把握シート」の作成と活用
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18K02758
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
若松 昭彦 広島大学, 教育学研究科, 教授 (70230919)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多様性 / 小学校 / 絵本 / 特別支援教育 / 特別活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,中国地方の小学校に研究協力を依頼し,「多様性把握シート」作成を通して,児童の多様性を横断的・縦断的に価値づけ,質的に“見える化”することで,「多様性に富む共生社会」の実現に寄与する知見を得ることを目的に,申請者と小学校教諭7名,大学院生1名の9名で共同研究チームを組織し,2019年度は計15回の協議を実施した(通算22回)。昨年度の第1回共同研究協議会の結果,下記軸で共同研究を進めている。 第1の軸は,児童の多様性を横断的・縦断的に質的に価値づける先行研究(Batson,2011 菊池・二宮訳,2012;Berkowitz, Oser, & Althof,1987;鹿毛,2018;西村・村上・櫻井,2015)等の知見や課題を整理し,4名の先生方の小学校で共同研究を進めた。2019年度学会誌(査読誌)に採択された研究内容は,「多様な児童の役割活動を通したエンゲージメントの促進」,「異学年交流活動を通した児童の向社会性の促進」,「学級への参画意識を育む学級活動の在り方」である。 第2の軸は,第1の軸を参考にして,信頼性・妥当性の高いエピソードを絵本にして,各学校に配布する計画を進めている(「絵本プロジェクト」)。「絵本プロジェクト」の発案は,「多様性把握シート」の構想をさらに進化・発展させたプロジェクトであり,プロジェクトチーフのもと,児童を対象とした絵本を製作することである。近年,学級経営の観点から特別支援教育と特別活動の関連に注目が集まっている(河村,2017,2018)。この絵本は,特別支援教育や特別活動で重視されている意思決定や合意形成などを含む場面や,多様な児童が自身のよさや可能性を生かして活動する場面等を物語にすることを想定した。2020年3月現在,学級集団に関する専門家の助言を踏まえて,絵本作家と絵本画家によるラフスケッチ(試案)を作成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<第1の軸>児童の多様性を横断的・縦断的に質的に価値づける先行研究の知見や課題を整理し,小学校4校で共同研究を進めており,2019年度は3校との共同研究が「日本学級経営心理学会」および「初等教育カリキュラム学会」の学会誌(査読誌)に掲載されたり,掲載予定となったりしている。残る1校との共同研究を2020年度に学会誌(査読誌)に投稿すべく執筆を進めている。更に,本研究の対象校種は小学校通常の学級であるが,これまで明らかになった共同研究の知見を中学校特別支援学級にも援用して,共同研究を進めることとなった。 <第2の軸>申請者とプロジェクトチーフとが緊密に連携を図ることで,円滑に「絵本プロジェクト」が進められている。また,前述したように,現在はラフスケッチ(試案)を作成している段階であり,共同研究チームの先生方とともに叡智を結集することで,よりよい絵本完成に向けて邁進し続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
<第1の軸>2020年度末までに残る1校との共同研究を学会誌に投稿し,研究成果を広く公開する。 <第2の軸>本来ならば2020年度の前半には改良版の効果検証を行い,2020年度末までに完成版を製作する予定であったが,新型コロナウィルス感染拡大の影響で,小学校での効果検証が困難な状況である。遅くとも2020年度後半には効果検証を行い,2020年度末までには完成させたいと考えている。 <全体的状況>新型コロナウィルス感染拡大の影響で,先行きは不透明であるものの,適宜,オンラインを含めた共同研究協議会や企画推進部会を開催したいと考えている。2020年度末には,中国地方の小学校の先生方を対象にした共同研究報告会を実施することを現段階では予定しているが,こうした社会状況を踏まえると集会活動制限の継続が十分に予測されるため,共同研究報告書の作成に重点を置きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
最終年度は,絵本ラフスケッチ修正のために,特別活動学専門家の協力・助言を仰ぐとともに,引き続き絵本作家と絵本画家に「絵本プロジェクト」に関する専門的知識を提供していただく必要がある。また,絵本の印刷・製本にかかる費用を印刷業者に支払う必要がある。さらに,効果検証および共同研究報告書作成に関する費用も想定される。そのため,これらに重点的に予算を配分したいと考えたためである。
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