2019 Fiscal Year Research-status Report
Research and constructing theory of "alternative community" being generated through social crisis
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18K03013
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
香川 秀太 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (90550567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 栄莉 立教大学, 文学部, 准教授 (00774770)
宮本 匠 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 准教授 (80646711)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アソシエーション / マルチチュード / アクターネットワーク / 状況論派エスノグラフィー / ポスト資本主義 / 震災 / 難民 / 社会的危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の社会は,経済的利益の獲得を主軸とする社会が基盤となっていた。これに対し,本研究プロジェクトは,震災,孤立,難民,職場での抑圧といった危機的状況の中から生まれる,新しい生き方や社会関係(オルタナティブ・コミュニティ)の生成過程やその実態調査を行うものである。 本年度は,そのような生成活動が活発な,神奈川県相模原市緑区旧藤野町周辺のまちづくり調査を引き続き行った。また,代表者が在籍するキャンパス周辺地域(相模原市中央区)にて,実践研究として,相模原市の議員や住民らと連携してコミュニティ形成活動を行ったり,市が初めて試みた市民参加型のまちづくりに関する調査も行った(代表者は,相模原市のまちづくりアドバイザーに着任)。そして,孤立化や貧困者の支援を行う団体と研究室のゼミ生とのコラボレーション活動とその調査なども行った。その他,これまでデータとして蓄積していたプロボノの調査の論文化,質的な方法論の論文化,海外の研究の出版に向けた翻訳なども行った。分担者も,引き続き,アフリカの難民に関する研究や,災害復興支援の活動について研究を進めた。 以上の調査からは,「営利と非営利の矛盾ないしグレーゾーン」から生まれる新しい可能性を明らかにすることができた。例えば,従来の新自由主義な「自立した個人(自己責任)を重視する企業家精神」を端緒とつつも,その限界を乗り越えていく協働的で情動的な関係性の創出過程が明らかとなった。また,同じく脱・経済至上主義,あるいは近代主義の見直しを標榜する理論ではあるものの,一方が他を批判してきた,柄谷行人のアソシエーション論,ネグリ&ハートのマルチチュード論,ラトゥールのアクターネットワーク論等が,マルクスのintercouse論を現代流に発展させていくことで,むしろ結合しうることを示した。本研究ではintercouruseを「交歓」と訳し,概念的展開を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究1】としてあげていた,「複数の「オルタナティブ・コミュニティ」の観察調査(質的研究)」に関しては,多様な場のインタビューや観察調査を進めることができ,昨年に引き続き,さらに論文や学会発表等で公開できた。また,経済優先社会に代わるオルタナティブな社会形成を,以前から実践的に目指し進めてきた日本労働者協同組合連合会(ワーカーズコープ)の全国集会で何度かコメンテーターとして交流させていただくなど,新しいネットワークも構築できた。 各コミュニティ参加者の特性を明らかにする,【研究2】の「質問紙調査(量的研究)」に関しては,【研究1】の質的調査の成果をふまえ,当初の予定や内容をやや変更し,特定の地域を中心に一部進めた。 【研究3】の「理論研究および知見の統合」については,従来別々だった複数の理論的視点を結びつける作業が進み,その一つを論文化(採択済み印刷中)することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(2020年度)は,新型コロナウイルスの影響で,予定していた調査が既に困難になっており,今後の社会情勢も読みにくい状況のため,予定を変更せざるを得ない点が出てくると思われる。 他方で,新型コロナの問題は,本研究のテーマ「社会的機状況」にまさしく当てはまるものといえるため,これによって各フィールドがどのように変化しているか,あるいはどのような社会形成を行っていくかの議論も,可能な方法で進める必要がある。 例えば,オンライン上でのインタビューやこれまでの調査内容の統括など,可能な方法を選びながら研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
文献研究のための文献代(書籍,論文DL代等),インフォーマントの調査協力謝金代,質的データの文字化委託料,調査・研究発表旅費,調査・分析・発表のための機材代に主に使用する。
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