2018 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the mechanism of pain in children as a social cognitive ability
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18K03047
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
柿沼 美紀 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (00328882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 一枝 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (00338568)
紺野 道子 東京都市大学, 人間科学部, 准教授 (30307110)
財部 盛久 南九州大学, 人間発達学部, 教授(移行) (50175436)
百田 豊 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50418612)
野瀬 出 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (60337623)
上村 佳世子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70213395)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 痛みの表出 / 発達障害児 / 被虐待児 / 知的障害児 / 家畜 / 家庭犬 / 痒みの表出 / アイトラッカー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は獣医師を加えて痛みについての話し合いを重ねた。動物の痛みと人の比較を行うにあたり、事例をあげ、動物と人の共通点、相違点を確認するところから始める必要があった。 基礎的な研究としては、発達障害児と定型発達児の情報処理の違いについてアイトラッカーを用いた調査を行った。情報処理の違いが他者の痛みの理解に及ぼす影響について今後検討を重ねていく。 臨床事例からは、痛みの表出が発達的な視点、障害別の比較、また養育者との関係によって変化することが報告された。また裏付けとして、盲腸の悪化、中耳炎の悪化などが障害によって異なるかを調べることとなった。 動物との比較からは、野生動物は痛みの表出が少ない、家畜では人であれば痛みを伴う侵襲的な作業にも耐えられることが指摘された。動物は人とは大きく異なる一方で、痛みを表出しない特定のタイプの子どもたちとの共通点も明らかになった。 家畜の中でも、人が意識的に育種交配を重ねた家庭犬においては、犬種によって飼い主が犬の痛みや痒みに対してする反応が異なることが指摘された。大学病院受診例では、皮膚病が軽症で受診する傾向がある犬種(例えばプードル)と、悪化するまで受診しない犬種(シーズーやダックスなど)に分かれることが判明。さらに、犬種によって飼い主の行動(例えば受診頻度)が変化することが示唆された。 3月に開催された発達心理学会では共同研究者の財部盛久、百田豊、研究協力者の高橋桃子が話題提供を行い、発達障害を専門とする小児科医の宮島祐が指定討論でラウンドテーブルを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は痛みの表出に関する事例検討と動物との比較について話し合いを重ねた。その成果は3月に開催された発達心理学会のラウンドテーブルで報告した。基礎的な定型発達児と発達障害児の情報処理に関する調査も実施した。これは他者の痛みの理解につながるものとしてアイトラッカーを用いて行った。発達障害児の場合、アイトラッカーのキャリブレーションの段階ですでに定型発達とは異なる部分が見られ、視覚的情報処理の困難さも示唆された。 今年度は複数回に渡り事例検討会を実施し、動物と人の比較を通し、痛みの表出の機能について検討した。野生動物、牛などの家畜は人であれば無言ではいられない状態でも反応しない。特に家畜は侵襲的な行為に対しての反応が低い。同様に家庭犬も痛みの表出は少ないが、体を触れられることに抵抗を示す場合が多い。例外としては、トリミングが必要な犬種(例えばプードル)は長時間のシャンプーやトリミングに耐えられる。プードルはハンドリングに対しては寛容であるが、一方で、痒みに関してはかなり表出が激しいことも指摘されている。 発達障害児や被虐待児、知的障害児の事例からは、本人の認知特性だけでなく、養育者との関わりも影響していることが伺えた。つまり、器質的なものだけでなく、経験などの環境要因も痛みの表出に影響することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
小児科と動物病院には共通点がある。それは受診のタイミングを決めるのは当事者ではなく、養育者や飼い主であることだ。本研究ではこの点に注目し、犬と飼い主の関係から、犬の行動が飼い主にどのような影響を及ぼすかを明らかにし、小児科を受診する養育者と子どものモデルになりうるかを検討する。特に痛みに関してはこれまでの話し合いから、犬と子どもでは共通する部分もあるため、人の特性を明らかにするうえで有効だと考える。 具体的には、平成31年度は家庭犬の表出がどのように飼い主の行動に影響を及ぼすかを動物病院およびwebで調査を行う。内容としては、犬種による痛みや痒みなどの不快な状態の表出の比較、飼い主の犬の行動に関する感受性、病院受診や知り合いに相談するといった社会的行動に及ぼす影響を調査する。 子どもの調査は中耳炎、虫垂炎、アトピーなどに関する表出、養育者の反応、受診時の症状の進行状況について検討する。主に養育者、医療関係者への聞き取りやアンケートを予定している。 他者の痛みの理解に関しては、アイトラッカーを用いた調査を定型発達および発達障害等の児童を対象に実施する。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究チームとの話し合いの中で調査の方向性の変更が生じたため、2018年度は実験計画を一部変更し話し合いに時間をかけた。 (使用計画) 2019年度にweb調査及び動物病院、クリニックを対象に面接調査等を行う。
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Research Products
(1 results)