2019 Fiscal Year Research-status Report
Convexity and global behavior of geodesics on Finsler manifolds
Project/Area Number |
18K03314
|
Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩濱 勝博 福岡工業大学, 付置研究所, 研究員 (20016059)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 哲也 長崎県立大学, 情報システム学部, 教授 (00259699)
糸川 銚 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (90223205)
印南 信宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20160145)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | フィンスラー多様体 / 非対称距離構造 / 切断跡 / Randers計量 / コンパクト階数1対称空間 / Blaschkeフィンスラー多様体 / 平行性 |
Outline of Annual Research Achievements |
非対称距離構造を持つフィンスラー多様体上の測地線の大域的挙動の研究は切断跡の構造を調べる事が極めて重要である.対称距離構造を持つリーマン多様体の切断跡とはその構造が全く異なる点に注目する.切断跡の最も単純な例は階数1のコンパクト対称空間に現れる.そのような切断跡を持つと考えられるBlaschkeフィンスラー多様体は各点からその切断点迄の距離が最短測地線の選択によらず一定となる特徴を持つ.Klingenbergや大森英樹は切断点における最短測地線の挙動を調べた.我々はBlaschkeフィンスラー多様体上でKlingenberg-Omoriの古典的定理を証明した。 測地線を更に詳しく調べた際に印南信宏・新潟大教授のアイデアが極めて有効に働き、Randers計量の測地線に関しリーマン多様体では見られない種々の現象を発見した.例えば、Minkowski平面上の異なる2点を中心とする互いに外接する単位円を固定する.Minkowski平面にRanders計量を導入し、2つの単位円は単位円の性質を保ちつつ新しい単位円の中心はMinkowski平面としての中心間の垂直二等分線に平行にずらす事が出来る.ここで、Randers計量に関して2円の接点は新しい2円の中心を結ぶ最短測地線の中点であって、視覚的にはV字形を描く.Randers計量に関して2つの単位円の中心を結ぶ最短測地線は中点で折れ曲がって見えるが、接点におけるこの測地線のco-vectorは連続性が保たれている. この性質を更に追求して、我々は自明でないアフィン関数を許容するフィンスラー多様体の種々の構造を研究している.更にフィンスラー多様体上の凸関数やアフィン関数がリーマン多様体とは全く異なる挙動を示す事も分かり、リーマン多様体上では起こらない新現象を見極める努力を展開している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つとして挙げた最小切断点における測地線の挙動に関するBerger-Omoriの定理のフィンスラー版を証明し、Blaschkeフィンスラー多様体の一点pの切断跡が滑らかな部分多様体で、その次元には階数1のコンパクト対称空間の何れかと一致し、その位相を調べる事に成功した.即ち、pの切断跡の切断跡が再びpである事も証明された.この研究に基本的役割を果たした最小切断点に関するKlingenbergの補題のフィンスラー版はリーマン幾何とは全く異なるが、極めて有効であった.特に、Randers計量に関する最小点に於ける測地線の挙動は全く驚くべき現象を発見したことは望外の成果であった. 分担研究者の永野哲也・長崎県立大教授はかねてより測地線の大域的挙動の研究を発展させることに成功した.即ち、フィンスラー多様体の測地線に沿う平行移動が、2種類のテンソルの消滅条件によって特徴づけられる事を解明し、その結果として測地線のパラメーターを逆転させた正則曲線が再び測地線となる条件を定める事に成功した.更に、測地線のパラメーターを逆転して得られた測地線に沿う平行移動が定義出来る為の基本関数の満たすべき条件を調べた.この結果を発展させ、測地線と別の逆向き測地線がある点に於いて接する現象が有ればその点に於いた2つの測地線は分岐することが分かる.この現象はリーマン幾何学では決して出現せず, フィンスラー幾何学固有の現象と言えるだろう.この成果はルーマニアのブラショフで開催されたフィンスラー幾何学に関する国際研究集集会で発表され、好評を得た. 研究代表者はかねてより凸関数の研究を進めているが、非対称計量と凸関数の関連性を更に深く進める為にアフィン 関数をフィンスラー多様体上で考え、大きな成果を挙げつつ有る.新しく仲間に入った印南信宏・新潟大教授の 優れたアイデアが極めて有効であった.
|
Strategy for Future Research Activity |
印南信宏・新潟大学理学部教授を新たに研究分担者として受け入れた結果、永野哲也・長崎県立大学教授共々新しく複雑な計算を 非対称距離構造を持つフィンスラー多様体で協力に推し進める。海外への旅費等を極力制御して国内での研究集会に参加し、 研究分担者間の研究交流を最大限深める.
|