2020 Fiscal Year Research-status Report
変分的手法の発展と非線形偏微分方程式や凸幾何学への応用
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18K03356
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 将敬 東京工業大学, 理学院, 助教 (90359688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形楕円型方程式 / 変分問題 / Mahler予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
凸幾何学や非線形楕円型方程式に関連する変分問題について、いくつかの研究を推進した。主なものは次の2つ。 (1):メトリックグラフ上での半線形楕円型方程式に関する研究 メトリックグラフ上で、半線形楕円型方程式の特異極限問題を研究した。特に最小エネルギー解の漸近挙動について考察し、最小エネルギー解の集中現象とグラフの形状との関係を明らかにした。特に、最小エネルギー解の集中する位置が、メトリックグラフの個々の辺の長さやグラフの頂点との位置関係に、どのように依存するかを明らかにした。この結果は倉田和浩氏(東京都立大学)との共同研究であり、論文[Kurata-S, J. Math. Anal. Appl. 491 (2020)]において発表した。その後、正値解に注目して特異極限問題の解を考察し、最小エネルギー解と類似の正値解の構成や、最小エネルギー解とは異なり頂点に集中する正値解が構成出来ることを示した。この結果から、メトリックグラフの特異極限問題においては、正値解の構造が、グラフの構造に従って複雑になることが分かった。この結果は論文としてまとめ、現在投稿中である。 (2):Berestycki-Lions条件下での非自明解の構成 半線形楕円型方程式で、非線形項がBerestycki-Lions条件を満たす場合、変分法による非自明解の構成が期待され、実際、全空間でポテンシャルが定数や漸近的に定数の場合は非自明解が構成されている。一方、有界領域においては、別の付加的な条件を加えた結果しか知られていない。そこで、十分に大きな有界領域では、Berestycki-Lions条件の下で非自明解が構成出来ることを示した。この結果は、佐藤洋平氏(埼玉大学)との共同研究で、論文[Sato-S, J. Elliptic Parabol. Equ. 6 (2020)]で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メトリックグラフ上での半線形楕円型方程式の特異極限問題の解析について、順調に解析が進み、特にグラフの頂点が解構造に与える影響の理解が進んだことは、予定以上に研究が進んだと言える。 一方、コロナ禍の影響も大きく、特に入江博氏と定期的に開催していたセミナーが実施出来なかった。このことにより、Mahler予想に関する研究は予定ほどは進まず、3次元で得られていた成果をarXivで発表するにとどまった。 総合すると、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
メトリックグラフ上での半線形楕円型方程式の特異極限問題について、特に正値解の解構造の解明を中心に研究を進める。 また、Mahler予想については、3次元で離散回転対称な凸体のMahler体積の評価が一つの目標であったが、現状の手法では、この問題の攻略は難しいことが分かってきた。なので、目標を少し変更し、高次元である程度の対称性を持つ問題に取り組む。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、参加を予定していた国際研究集会が延期になったり、日本数学会を始めとした国内出張や、入江博氏との定期的なセミナーが出来なかったため。
次年度後半、ワクチン接種などにより出張等が可能になったら、まずは入江博氏とのセミナー・研究打ち合わせは積極的に再開する予定である。なお、私が名城大学に異動したことにより、入江博氏とのセミナー・研究打ち合わせには当初の予定以上に費用が必要になる。
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