2019 Fiscal Year Research-status Report
関数空間上の汎関数に対するエネルギー最大勾配曲線の統合的研究
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18K03381
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山浦 義彦 日本大学, 文理学部, 教授 (90255597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 与士文 日本大学, 文理学部, 助教 (30646427)
SVADLENKA KAREL 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60572188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Curves of maximal slope / Legendre-Hadamard 条件 / p-Laplacian system / 双曲型方程式の離散弱解に対する高可積分性 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の3つの方向性で研究を進めました: [1] Wasserstein 距離空間における curves of maximal slope の構成; [2] p-Laplacian system に対する discrete Morse flow 法による局所正則性解析; [3] 双曲型方程式に対する discrete Morse flow 法による高可積分性の研究, のそれぞれについて実績を報告します. [1] 準線型熱方程式に対する直接法に基づいた curves of maximal slope の構成についての研究成果を論文としてまとめることができました. これは, 共同研究者である三村与士文氏との共同研究です. 主要項のべきについて, 技術的に大局的な下からの有界性を導ける「条件」を見つけることができ, その条件下での時間局所解の構成ができました. 特筆すべきことはその条件が, 放物型方程式の時間局所解の存在で古典的な条件として知られているWeissler 条件と一致した点です. [2] 本研究ではその離散化近似に対する局所一様評価を目指しました. discrete Morse flow 法における近似解に対する一様評価は, 極限関数の正則性が, 近似解の極限移行によって維持されるという意味での近似収束性が得られる点で連続系方程式弱解に対する正則性議論とは別の意義を有しています. [3] 弱解の時間, 空間微分に対する高積分性を, Discrete Morse flow 法によるアプローチです. 離散化方程式に対する この研究では, 静岡大学の菊地光嗣教授の研究結果である, 一般性をエネルギー汎関数が一般性をもつ双曲型方程式の弱解の時間および空間微分に対してその高可積分性を証明することを目指しています.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績概要で述べた [1]-[3] について進捗状況を報告します.
[1] 確率測度の集合に Wassertein 距離を入れて放物型方程式の解を構成することにより, エントロピーの増大性の説明が可能になることが Jordan-Kinderlehrer-Otto らの研究によって知られていますが,これに関して, 時間変数局所解に構成をしていく方法での解の構成を目指しており, このために, その構成に於いて必要となる, エネルギー汎関数の subdifferential および slope についての知識導入, および, 理論への適用を試みております. [2] 任意可積分性を導出す際の議論では, 様々な方法を試し, 最終的には Moser iteration という技術が適用可能であることが当該年度の研究で判明し, その証明を完成させつつあります. 局所正則性解析と, discrete Morse flow 法による時間離散化パラメータでは複雑な場合分けが必要となります. その詳細の検証に取り組んでおります. さらに, 扱うエネルギ汎関数の退化性の回避のために, 非退化汎関数による近似も併用する必要があるため, エネルギー汎関数の変分収束の理論を用いることで discrete Morse flow 法が適用できることがわかってきました. [3] エネルギー汎関数に現れる一般項の構造条件の指数に対する条件下で, 目指す高可積分性が導出できる見込みが得られており, 現在その詳細検討を続行しております. そこまでで論文として結果を投稿する予定です. さらに, 条件を最大限除去するためには, 放物型方程式の弱解に対する高可積分性を証明した, Kinnunen-Lewis におけるパラメータつきの双曲型シリンダーによる単調性導出が適用できる可能性を検討している段階です.
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Strategy for Future Research Activity |
[1] については, より強く Wasserstein 距離空間での直接法による curves of maximal slope の構成の研究を進めてまいります. そのためにはまず, 時間大局解をもつ最も単純な熱型方程式について, エントロピーの増大を伴う curves of maximal slope を構成し, そこで得られた計算手法を, 有限時間爆発解をもち得るエネルギー汎関数に対して適用できるかどうかを検証するという推進方策が考えられます. この方向で研究を推し進める計画です.
[2] 現在の研究では, p-Laplacian 方程式の指数 p は 2より大きい場合に限られています. p が 2 以下の場合にもその研究対象を広げる計画です. そのために, まず Degiorgi による iteration 法の適用可能性を模索し, その手法が通用するかどうかを見極めることから始める予定です.
[3] 進捗状況でも述べた通り, べきに対する条件を最大限緩めるためには, パラメータ付きの放物型シリンダーを用いた iteration 議論が必要になると予想しています. この手法を discrete Morse flow 法に適用することから始めます. また, 星野-菊池によって知られている Legendre 条件をLegendre-Hadamard 条件まで一般化する研究にも取り組む計画です. 星野-菊池では, 双曲型方程式の弱解の高可積分性を, 近似偏微分方程式の弱解として近似解を構成しそれを手がかりとして証明を遂行していますが, エネルギー汎関数の最小性を使うことで, Legendre-Hadamard 条件にまで条件緩和が可能になるという大きな手掛かりは得られています. 今後それを基盤として, 研究を進める計画です.
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Causes of Carryover |
2019年度末に計画していた, 知識導入を目的とした研究者招聘が, 社会情勢により遂行できなかったため, 一回分の出張旅費を次年度2020年度の使用とさせていただきます. 今年度は出張が予定通り実現できない可能性が高いため,専門分野の文献購入(15万円から20万円程度)および, オンラインでの研究遂行のために, ノート型パソコンおよびオンラインのための機器, およびソフトのライセンス購入(15万円から20万円)にあてる計画しております. 共同研究者である三村与士文氏には6万円を, カレル・シュワドレンカ氏には7万円を分担金として使用していただく計画です.
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Research Products
(5 results)