2021 Fiscal Year Research-status Report
関数空間上の汎関数に対するエネルギー最大勾配曲線の統合的研究
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18K03381
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山浦 義彦 日本大学, 文理学部, 教授 (90255597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 与士文 日本大学, 文理学部, 助教 (30646427)
SVADLENKA KAREL 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60572188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 双曲型偏微分方程式 / 高可積分性解析 / 弱解正則性解析 / p-ラプラシアン方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 変分解析に基づいて時間変数を含む時間発展型方程式の弱解の構成および, その正則性解析の研究を目指している. その方法には大きく Curves of Maximal Slope の構成による方法 (CMS 法) と, 時間変数の離散化による Discrete Morse flow 法 (DMF 法)が知られており, その両方での統合的な研究を試みている. CMS 法については, 本研究費申請中に分数階非局所積分微分方程式への応用という問題着想を得た. 当該研究は今年度採択された科学研究費に基づいて進める重要な出発点を与えている. この着想の基礎は, 分数階非局所積分微分方程式についての弱解構成の研究である. これは熊本大学の中村謙太氏, 三沢正史氏との共同研究により進めている. 一方, DMS 法に関しては, 研究代表者は双曲型偏微分方程式の弱解に対する1階導関数の高可積分性の導出の研究を中心に行った. 先行結果である K.Hoshino-N.Kikuchi (1996) による, 線型双曲型偏微分方程式系の弱解に対する1階導関数の高可積分性の結果の一般化を目指している. また, すでに出版された Kato-Misawa-Yamaura による p-Laplacian 方程式系の弱解の1階微分のヘルダー正則性理論の DMF 法への応用の研究にも着手している. 研究分担者の Svadlenka Karel 氏は DMS 法に基づく数値解析への応用に関する研究を進めており, いくつかの成果を発表している. また, 三村与士文氏は Wasserstein 距離空間上の DMS 法による Keller-Segel 系方程式の弱解の解析, および, 直積距離空間上での散逸系および保存系に対する変分的な解の構成法についての考察を行っており, 成果を発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】で述べた研究代表者の研究は (1) 分数階非局所積分微分方程式についての弱解構成, (2) 高可積分性解析, (3) p-Laplacian 正則性解析である. 詳細は以下のとおりである: (1) すでに論文としてまとめることができ, 現在, 論文雑誌に投稿中である. 指数 p と 2 の大小により, 主要項の扱いは大きく異なるが, そのどちらの場合についても弱解の構成に成功した点が, 本論文の優位性の一つとして挙げることができる. (2) 双曲型偏微分方程式に対する高可積分性解析の研究については, Hoshino-Kikuchi による既存の結果では, 主要項の係数関数には Legendre 条件が課されている. それに対して本研究ではより一般の, Legendre-Hadamard 条件まで拡張した. この条件は2次形式では, エネルギー汎関数のQuasi-Convex 性に相当する最も一般的な条件になる. この一般化における最大の困難が, 主要項の下からの評価に, 負の誤差項が生じる点にある. この困難を解決するために, Kato-Yamaura (2019)により, 放物型方程式に対して, うまく機能することが実証された, transformation trick を適用できることが証明された. この基本アイデアに基づいて, 現在具体的計算を完成させつつある. (3) p-Laplacian の弱解正則性解析に関する研究では, DiBenedetto による DeGirogi 正則性解析の p-Laplacian 方程式系への応用理論についての詳細なフォローをこの半年間で完成させることができた. 現在ではその DMF 法への適用として, 最大の困難であろうと予想される「弱解と対数関数の合成」によるアプリオリ評価の計算に着手している.
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】に述べた(2)と(3)の研究を推し進める予定である. (2) 対応するエネルギー汎関数の凸性に頼ることにより, 弱解をエネルギー汎関数の最小化関数として離散時間ステップごとに定義することが可能であることが今までの計算によって証明されている. 今後は, 変分解析の適用可能性に基づいた後退差分版Transformation trick の双曲型偏微分方程式への応用の詳細計算に基づいて, 論文を完成させる計画である. 本申請の研究費は, コロナの現状に鑑み, 2021年度は, 計画していた研究費支出がほとんどできなかった. このため, 期間延長を申請し, 承認をいただいたので, 2022年度に使用する計画である. 2022年度は対面での研究討論が徐々に可能になってきたことを受け, 本研究の共同研究者である星野慶介氏 (千葉工業大学), 加藤信幸氏 (日本工業大学) との研究打ち合わせ討論を, 研究代表者の勤務校である日本大学にて頻繁に開催する計画である(謝金). 2022年秋の論文投稿を目指して作業を推進する計画である(論文作成のためのノートパソコン購入 (消耗品)). (3) については, 現在は要所要所で後退差分法への応用可能性を模索している段階であるが, それらを1つずつ完成させ, 論文完成に近づけていく. 特に, 進捗状況で述べた最大の困難であると考えられる対数関数の合成によるアプリオリ評価導出が, 連続系議論から後退差分へ応用可能性について現在取り組んでおり, それを完成することが直近の目標になっている. 本研究では共同研究者が勤務する熊本大学への出張(国内旅費), あるいは, 熊本大学から日本大学に招聘(謝金)し研究討論をしつつ計算を遂行していく計画である.
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により, 国内, 海外出張が遂行できなかった. さらに, 研究打ち合わせや知識導入のための研究者招聘も対面実施は中止せざるを得なかったため次年度使用額が生じた. 翌年度は, 申請最終年度に当たる使用を行うため, 論文作成のためのノートパソコンの購入, 共同研究者の勤務大学への出張, および, 共同研究者の研究代表者の勤務校への招へいに伴う謝金使用により支出を完了させる計画である.
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Research Products
(5 results)