2020 Fiscal Year Annual Research Report
Control of the magnetic structure for chiral rare-earth magnet by substitution
Project/Area Number |
18K03539
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
大原 繁男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60262953)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | キラル磁性 / 元素置換効果 / 希土類金属間化合物 / 単結晶合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はキラル物質RNi3Ga9(R=Gd,Dy,Tb)の磁性への元素置換効果を研究した。いずれの物質でもNiをCoで高い濃度まで置換できる一方、Cuでは置換できない。三物質ともCo置換によって磁気秩序は抑制される。例えば、DyNi3Ga9のNiをCoで50%置換すると磁気秩序温度は10Kから4.5Kにまで下がる。RNi3Ga9では、普遍的に磁気秩序状態をCo置換で抑制できると結論づけた。その原因は伝導キャリア濃度の変化による可能性が高い。キラル結晶では、フェルミ面はスピンにより分裂している。磁気秩序状態がキャリア濃度により変化するのは、対称、反対称磁気相互作用ともにフェルミ面の変化に敏感であるためと考えられる。Coでは正孔が注入されることから、Cu置換で電子を注入できれば、磁気相互作用を強めることができると考えられる。 物質探索として、NiをPdやPtに置き換えてスピン軌道相互作用を大きくした物質合成を試みた。RNi3Ga9と同じキラルな構造を持つ物質は得られなかったが、Dy4Pd9Ga24やEr4Pd9Ga24といった新物質を発見してその性質を報告した。また、物質探索の範囲を軽希土類まで広げてRPd3Al9の合成を試み、同じ組成比の物質を得るに至った。今後、結晶構造を決定する予定である。また、AlをSiに変えて物質探索した結果、YbIr3Si7とYbNi2Si3を発見し、いずれも重い電子状態の物質であることを報告した。 キラル結晶合成技術として、大型で左右性の高い結晶育成の方法を開発した。温度勾配をつけた結晶合成炉を作成し、結晶核生成数を抑制することで、目標に至った。従来の3.5倍ほどの大型結晶を得たが、結晶の左右性は欠陥などをきっかけに変化する場合があることもわかった。今後、結晶が成長する温度領域を実験的に明らかとして、欠陥の入りにくい結晶成長条件を確立する。
|