2020 Fiscal Year Research-status Report
Chaos in classical and quantum gravity based on gauge-gravity correspondence
| Project/Area Number |
18K03623
|
|---|
| Research Institution | Chuo University |
|---|
Principal Investigator |
棚橋 典大 中央大学, 理工学部, 助教 (50581089)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
| Keywords | ブラックホール / ブラックホール摂動 / 変数分離性 / ゲージ・重力対応 / 物性理論 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主にブラックホール摂動方程式の変数分離性に関する研究を推進した。ブラックホール時空の動的現象を調べるための代表的な手法は微小振幅の摂動に注目するブラックホール摂動論であり、これを用いることによってブラックホールおよびその周辺領域における重力現象の性質を解明できる。この摂動方程式は注目する摂動場の成分についての複雑な偏微分方程式系で与えられ、そのためその解を求める際には技術的な困難が伴う。ここで、もし摂動方程式系をより少数の変数についての方程式に簡約し、なおかつその方程式を変数分離の方法で解くことが可能となる場合については、元の方程式系を直接解く場合と比べて大幅に少ない労力で解を構成することが可能となる。この点について、ブラックホールの隠れた対称性に基づいた新たな変数分離法が近年提案され、定常ブラックホール時空上の電磁場摂動の方程式が変数分離された。この変数分離法を拡張し、重力摂動について変数分離法による解法を実現するための方法について研究を行った。その結果として、あるクラスの重力摂動に関して上記のような変数分離法を実現するための新たな手法が発見された。現在、この手法の適用範囲をより拡大するべく、相補的な役割を果たす手法の開発に向けた研究に着手している。
上記の研究に加え、ゲージ・重力対応に基づいて物性系の性質を解明する研究にも取り組み、電場・磁場を印加した際に生じる物性系の不安定性、および新たな非平衡定常状態に対応する時空の解の構成などについて検討と議論を開始した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホール時空上の場の摂動方程式の変数分離性について、これまで電磁場の摂動に注目して行われてきた研究を重力場の摂動へと拡張する研究に今年度は主として取り組んだ。現在までに、この拡張を可能とする新たな技法が発見されるなどといった部分的な成果が得られている。現状ではこの技法が適用可能なのはあるクラスの重力摂動に限定されるため、適用範囲を拡大するための手法の拡張や、相補的な手法に基づく摂動方程式の取り扱いに関する研究についても取り組んでいる。また、ゲージ・重力対応の物性系への応用という新たな方向性の研究についても、複数の課題について議論と解析を進めている。以上より、当初の計画とは方向性・進捗状況が変化しつつあるものの、一定の成果も上げられていると判断する。
|
| Strategy for Future Research Activity |
ブラックホール摂動の研究について、これまでに得られている重力摂動方程式の変数分離性に関する研究、およびそれとは相補的な手法に基づく解析をそれぞれさらに進展させる。これらの研究は主に摂動方程式の取り扱いに関する技術的な側面に注目するものであるが、これが完成した暁にはそれを応用することでブラックホール時空の諸性質の解明につながる応用研究ができないか検討する。その例としてはブラックホールの安定性解析やブラックホール解の摂動的な一意性の証明などへの応用などが挙げられるが、他にも何か応用可能な興味深い研究対象がないか検討を重ねる。また、以上の成果を取りまとめた論文の発表に向けた準備も並行して進めていきたい。このほか、ゲージ・重力対応に基づいた物性系の諸性質の研究についても議論と解析を進めて、具体的な成果を得るところまでつなげたいと考えている。
|
| Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により国内・海外出張の大幅な削減を余儀なくされ、その分の余剰金と前年度からの繰り越し分を次年度に繰り越すこととなった。経費は消耗品費、研究会参加費、講演謝金や研究会開催費などに充てることを考えている。
|
| Remarks |
・重力理論研究についての講演会 Online JGRG webinar series に企画時から携わり、2020年9月より定期的に開催を続けている。
・重力理論に関連する数学や物理に関する研究会 The 4th workshop on "Mathematics and Physics in General Relativity"を開催し、重力理論や情報幾何などの幅広い話題について議論を行った。
|
