2023 Fiscal Year Annual Research Report
Chaos in classical and quantum gravity based on gauge-gravity correspondence
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18K03623
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
棚橋 典大 中央大学, 理工学部, 助教 (50581089)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子カオス / ゲージ・重力対応 / ブラックホール摂動 / 物性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に以下の研究課題に取り組んだ。 ・量子カオスの新たな指標:量子系におけるカオスは、その強度をどのように特徴づけるかに不定性がある。本研究では最近提案された新たな量子カオス強度の指標であるKrylov complexityとそれに関連する量に注目し、その性質を典型的な量子カオス系の一つである量子ビリヤードについて解析した。その結果、古典カオスの指標と、量子カオスの指標として知られているLanczos係数の分散およびr-ratioと呼ばれる量が強く相関していることが示された。この系においては古典カオスと量子カオスとの間に強い関係があること、およびLanczos係数の分散が量子カオスの忠実な指標として使えることを示したことが本研究の成果である。 ・せん断流におけるスピン流生成:量子理論と古典重力理論を対応付けるゲージ・重力対応に基づけば、重力理論を用いて量子系の動的振る舞いを容易に解析できる。この手法に基づき、せん断流を伴う物性系の重力理論における対応物を構成してその性質を解析した。また、この研究に動機づけられて、この系におけるスピン流生成の新たな機構について物性理論研究者との共同研究を行った。その成果を論文としてまとめて学術雑誌に投稿し、現在査読が進んでいる。 ・ブラックホール摂動論:ブラックホールの動的性質はブラックホール摂動論を用いれば解析できるが、一般には摂動の運動方程式は複雑でその解析には技術的困難が伴う。この問題について、これまでに知られていたより広いクラスの高次元回転ブラックホールの重力摂動を変数分離法によって解くことが可能であると判明した。この新手法によるブラックホールの安定性解析を進めており、漸近AdS時空におけるブラックホール不安定性、および漸近平坦時空における超放射現象について数値計算結果が得られた。現在、これらの結果の検証と論文投稿準備を行っている。
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