2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03713
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
樋口 あや 国立天文台, 天文データセンター, 特任研究員 (00648214)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | デブリ円盤 / ALMA望遠鏡 / 原始惑星系円盤 / 電波天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
デブリ円盤は、太陽系以外の若い恒星周りで発見された、主に塵や岩石から構成される円盤で、数10-数100auの半径を持つリング状構造をしたものが多く見つかっており、リング構造や既に円盤内で形成された惑星の探査などの研究がなされてきた。しかし近年、デブリ円盤にはほとんどないと考えられてきた「ガス成分」が多くのデブリ円盤で発見され、その起源が注目されている。本研究ではデブリ円盤のガスの組成に着目し、その起源が形成過程で残存されたものであるのか、あるいは塵からの2次的供給であるのかを探る。本研究ではこれまでに、ALMA望遠鏡を用いてくじら座49番星を観測し、デブリ円盤内の炭素原子ガスの分布を明らかにしてきた。さらに炭素の希少同位体も検出され、炭素原子ガスの量がこれまでの推測よりもずっと多いことも明らかにしてきた。これらの研究はデブリ円盤のガスに関する観測研究を大きく進展させた。本年度は、さらにALMA望遠鏡のアーカイブデータを用いて、ガスの物理状態について観測的な観点からまとめ、論文として報告した。以上から、本研究は順調に進んでいると言える。さらに国際協力の元、デブリ円盤のガスサーベイプロジェクトを立ち上げ、観測提案書を提出するなど、国外での共同研究が大きく進展し、今後はこれらのデータを元に統計的な議論を展開してく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍であったため、ALMA望遠鏡の観測はストップしてしまったが、ALMA望遠鏡のアーカイブデータと独自の解析ツールを用いることで、デブリ円盤のガスの物理状態について調査し、これまでにない視点での研究を推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに配布されたALMA望遠鏡のデータを解析し、論文化を行うと同時に、電波観測だけにとどまらず、すばる望遠鏡などの大型光・赤外線望遠鏡による観測を展開し、惑星系形成論のグランドシナリオの形成に貢献していきたい。近年、惑星大気の組成を調べることができるようになりつつあり、将来的には、惑星大気の違いに関する観測的知見、固体惑星やガス惑星が形成される環境の違いなどの理解が進むであろう。このことは、太陽系内の他の惑星と地球環境の違いの理解や、地球の大気組成の理解などの研究にもインパクトを与えると期待されるため、デブリ円盤でのガスの組成とその散逸過程の理解をもとに、そのような研究にもスコープを広げて行きたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で、国内外の出張が全てキャンセルになったため次年使用額が生じた。翌年度の国内出張旅費として使用予定である。
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Research Products
(9 results)