2019 Fiscal Year Research-status Report
近地球小惑星の物理進化と力学進化を結合する観測的・数値的研究
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18K03730
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
伊藤 孝士 国立天文台, 天文データセンター, 助教 (40280565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 二美 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (20399306)
樋口 有理可 国立天文台, RISE月惑星探査プロジェクト, 特任研究員 (90597139)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小惑星 / 太陽系力学 / 彗星 / von Zeipel / 分光観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は太陽系力学の基礎に回帰することからはじめ、いわゆるLidov-Kozai機構なる現象がどのように太陽系小天体の動径方向移動に寄与して来ているかを検証した。このためOort雲の形成と新彗星の力学進化に関してそのことを数値的に調べたが、その過程でLidov-Kozai機構の枠組は既に19世紀末にHugo von Zeipelが定量的に確立していたことを見出した。厳密に言えばこれは太陽系力学そのものの成果ではないが、副産物的に太陽系研究史に大きな発見を行ったと言える。 Oort雲形成に関する数値計算では、Oort雲から落下して惑星領域に入る新彗星はせいぜい1000万年のオーダーでしか惑星系に留まらないことが分かった。とりわけ外部オールト雲からやって来る離心率の大きな天体は一度のみの回帰で外部放出される。この流入フラックスからオールト雲全体の天体存在量を推定できる可能性があり、新年度にはそれに取り組む。 また地球型小惑星の中でもいわゆるQ型小惑星の起源研究に取り組み、この小惑星の表面が従来言われていたほど新鮮ではない可能性を見出した。小惑星表面の光譜(スペクトル)は表面粒子の粒径に強く依存し、Q型小惑星は粗い粒径を持つ粒子に覆われている可能性を数値的・実験的に示した。 同時に、探査候補天体である近太陽小惑星(3200) Phaethonの分光観測のデータ処理にも取り組んだ。先行研究で予想されている通り、このB型小惑星の表面の一部にはやや赤めの部分、つまりC型小惑星的な部分が存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したQ型小惑星の起源探査のように当初は予期しなかった方向へ進んでいる研究もあるが、そこでも成果は得られており、総合的に見れば本計画は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の研究計画通りに進める。但し2020年冒頭からの新型コロナウィルスの蔓延により、2020年前半に予定されていた観測がいくつか中止となった。また参加予定であった国際会議のすべてが延期またはオンライン開催となった。このため計画の一部組み直し、および予算の先送りを行う必要の発生が予想される。
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Causes of Carryover |
昨秋に欧州での国際会議に参加した際、本来は本計画の基金用いて旅費とするはずであった。しかし幸いなことに主催者側から招待を受け、旅費と滞在費用について財政支援を受けた。これにより次年度使用できる当該助成金が生じた。これは今年度分の国際会議の参加費用として使用予定である。
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