2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K03770
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
常松 佳恵 山形大学, 理学部, 准教授 (90722207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 大志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山防災研究部門, 特別研究員 (60804896)
横尾 亮彦 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70420403)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抵抗係数 / 揚力係数 / レイノルズ数 / 風洞試験 / 軌跡 / 圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はスケールの違いなどから別々のモデルとして扱われているかを表すそれぞれの数値モデルを組合せた包括的な数値モデルを開発することを目的としている。2019年度は、前年度から続けている風洞試験による火山岩塊の空力学的特性の解明を引き続き行った。また、実際の火山では何度も観測できないため手法の確立が必要と考え、TrashCanoと呼ばれる爆発的噴火を模した実験を行い、それを観測した。 前年度は実際に蔵王火山で採取された火山岩塊を用いて風洞実験を行ったが、今年度は大きさによる抵抗の違いや、レイノルズ数依存性を考えるために、岩塊の大きさを変えて作成した3D模型を用いて岩塊の抵抗係数、揚力係数の測定を行った。100%と150%の大きさの模型を用いた結果からは、岩塊を回転させた場合にはレイノルズ数が臨界レイノルズ数より大きいとほぼ一定の抵抗係数を示すことが分かった。これにより、岩塊の大きさよりもレイノルズ数と回転の有無が抵抗係数の値に影響することが分かった。揚力係数については値が±0.1程度とほとんど岩塊の運動に影響しないことが考えられる。 TrashCano実験はポリバケツに大きさの違うゴムボールを詰め、そこに液体窒素の入ったペットボトルを入れ、気化による膨張を利用して爆発させる実験である。この実験では初速度や飛行距離の違いが何によって現れるかを観測した。その結果、ボールの断面積に応じて圧力がかかり、初速度の違いはボールの断面積と密度に依存することが分かった。観測には簡易的なハイスピードカメラを用いたが、これを2台以上用いることによってボールの軌跡の座標を3次元で取得できるようになった。このような観測をさらにフレームレートや倍率の高いハイスピードカメラを用いて行えば、実際の噴火においても火山岩塊の軌跡を時間発展の3次元情報として得ることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で注目しているのは火山岩塊と火山灰輸送という二種類の火砕物輸送のスケールの違いをどのように統一的な物理法則で表すか、という点である。そのため、火砕物の大きさの違いが、岩塊や火山灰の運動にどのように影響するかを見る必要があった。風洞実験・Trashcano実験を繰り返し行うことによって空中での運動中に一番影響を及ぼすと考えられる空力学的特性を計ることができ、爆発の状況を再現してその軌跡を得ることができたため、物理的に普遍な傾向を見出しつつある。これらは火山物理学の分野では今まで調べられてこなかったものであり、世界的にも重要な成果となり得る。また、普遍的法則を数値モデルに取り入れる作業も進められてきているため、昨年度は観測などができずに遅れ気味であったが、今年は遅れを取り戻し順調な進展を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は風洞試験を50%、100%、150%の大きさで条件を整理して行い、この結果からシミュレーションの代入値である抵抗係数および揚力係数をレイノルズ数などに応じて計算の中で変えるモデル化を行う。この時間的に変動する抵抗係数を数値計算に用いた場合、抵抗係数一定の従来からのシミュレーションとの違いがどのように現れるかを、パラメータスタディを行って整理する。また、風洞試験からは抵抗の値は岩塊が回転することで一定の値に収束することが分かって来たため、Trashcano実験から岩塊の回転しやすい方向や回転速度などを計測し、シミュレーションを行う際の条件に用いる。さらに、これらの実験から得られる傾向が実際の噴火でも同様に観測されるのかを確認するため、桜島などの活火山で実際の噴火を観測し、火砕物の軌跡や火砕物の着地地点の分布を火砕物の大きさごとに得るような野外調査を行う。得られた観測結果を数値モデルの検証に用い、検証されたモデルを用いて活火山で今後起こり得るようなハザードの予測を行って、数値モデルなど共に学会や論文で発表する。
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Causes of Carryover |
観測によって使用を予定していた金額を、観測技術の確立がなされていなかったため先送りする形となった。実験を行って観測の基礎的な技術を見につけ、手法の確立もできたことから、次年度には実際に火山噴火を観測することを試みるため、その旅費や観測に必要な物品の購入に充てる。
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[Presentation] Ballistic Risk Assessment of Climber Movement on Mountains2019
Author(s)
Tsunematsu, K., Fujita, E., Kubo, T., Miyagi., Y., Yoshimoto, M., Honda, R., and
Organizer
27th IUGG General Assembly