2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on the processes of ascent and cooling of deep crustal rocks in continental collision orogens based on unusual melt inclusions
Project/Area Number |
18K03789
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
廣井 美邦 国立極地研究所, 研究教育系, 外来研究員 (40019427)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メルト包有物 / ザクロ石 / 過冷却 / グラニュライト / 部分融解 / 高温変成作用 / 大陸衝突型造山帯 / グランディディエライト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は特にスリランカの現地調査によって、グラニュライトを構成するザクロ石結晶中に、過冷却固結した特異なメルト包有物(珪長岩包有物)の出現が予想されてはいたが未確認であった地域(ハイランド岩体とビジャヤン岩体の境界部付近)での試料採集を行い、その後の室内作業によって、その予見が正しいことを確認した。それまでは、主としてハイランド岩体とワニ岩体との境界部付近で珪長岩包有物の産出が確認されていたが、この調査によって、ハイランド岩体とビジャヤン岩体の境界部付近(ビジャヤン岩体上のハイランド岩体であるカタラガマ・クリッペも含む)にもその出現が確認され、珪長岩包有物出現が異なる地質体の境界部付近のハイランド岩体構成岩に限定されており、ハイランド岩体が上下の境界部付近で急冷されるようなテクトニクスがあったこと、すなわち、高温のハイランド岩体が相対的に低温の岩体(ワニ岩体とビジャヤン岩体)の間に挟まれるように定置したことがより確実になった。また、ホウ素を含む高温鉱物であるグランディディエライトが珪長岩包有物中だけに出現することがスリランカ産のザクロ石に富むグラニュライトと南極産のマッフィックなグラニュライトで確認され、これらの岩石が高温変成時に部分融解し、それによって生成されたメルトがザクロ石中にトラップされたものを除き、ほぼ完全に分離されたことが明らかになった。 また本年度には、南極産の超高温(900℃以上)のグラニュライト中のザクロ石中に珪長岩包有物に加えて、藍晶石、珪線石、紅柱石の3種の多形が包有されることがあることと、それらを含むザクロ石に成長累帯構造が残存していることがあることを報告する論文を印刷公表し、大陸衝突型造山帯を特徴づける超高温変成作用と地殻内での岩石の部分融解について新しい知見を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、スリランカ国内のこれまで未調査であった地域での調査とサンプリングを実施し、予見した通り、いくつかのグラニュライト試料中のザクロ石結晶中に過冷却した特異なメルト包有物(珪長岩包有物)が出現することを確認することができた。この現地調査において、スリランカの共同研究者から多大な支援を得るとともに、十分に意見交換を行うことができたが、関係者以外では珪長岩包有物の重要性がほとんど認識されていないことが判明した。一方、国内では、厳選したスリランカ産と南極産の重要試料の詳細な観察と分析を行った結果、珪長岩包有物として残存していたメルトが高温変成時の部分融解で生成したものであることと、生成したメルトの大部分が溶け残り物質(グラニュライト)から分離し、抜けていったことがより明確になってきた。また研究成果の一部は論文として印刷公表することができた。このように研究はほぼ予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、厳選した重要試料の詳細な観察記載と各種の精密分析(CLによる石英の累帯構造の検出とそのTi含有量の測定など)を行う。また、これまで考察が不十分であった、母岩とザクロ石結晶中の珪長岩包有物がたどった温度-圧力経路の差異について検討する。 スリランカは珪長岩包有物を含むグラニュライトの産出がもっとも広域的に明らかにされてきた大陸衝突型造山帯であるが、珪長岩包有物出現の重要性は研究代表者の共同研究者を除く同国の研究者にはまだほとんど理解されていない。そのため、スリランカ地質学会での講演等によって珪長岩包有物研究の重要性を開陳し、同国でのこの研究の普及を図る。 またこれまでに得られた成果は論文化し、印刷公表する。
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Causes of Carryover |
2018年9月のスリランカでの現地調査において借り上げた車両(ペラデニヤ大学所蔵)の借り上げ代の請求書が届くのを待っていたが、2019年3月までに届かなかったため、次年度使用額が生じた。2019年度にもスリランカ出張を計画しており、この時に改めて請求書の送付を依頼し、それによって支払う予定である。
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Research Products
(2 results)