2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the processes of ascent and cooling of deep crustal rocks in continental collision orogens based on unusual melt inclusions
Project/Area Number |
18K03789
|
Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
廣井 美邦 国立極地研究所, 研究教育系, 外来研究員 (40019427)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | メルト包有物 / 過冷却組織 / ザクロ石 / 大陸衝突型造山運動 / 高温高圧広域変成岩 / 部分融解 / 微細組織保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
大陸衝突型造山帯の深部で形成された高温高圧広域変成岩(グラニュライト)は部分融解していた可能性が高いが、長年、決め手となる事象が得られず、議論と混乱が続いていた。ところが近年、それを確証するものとして、ザクロ石やジルコンなどの結晶内部に保存されたメルト包有物が見いだされた。それには冷却固結してガラス化したものと極細粒で等粒状の鉱物集合体になったものがあり、後者は「ナノ花崗岩」と呼ばれた。研究代表者はスリランカや南極産の高温高圧広域変成岩中のメルト包有物の研究を開始し、「ナノ花崗岩」に加えて、斑状組織や樹枝状~球晶状の過冷却状態で成長した結晶が含まれる火山岩のような特徴を示すものがあることに気づき、「珪長岩包有物」と呼んでその出現の重要性を強調した。火山岩が捕獲岩として地下深部の岩石を含有することはよく知られた事実であるが、高温高圧広域変成岩中のザクロ石結晶中に火山岩的な特徴を示す物質が含まれることは予想外であったためか、学界でもすぐには受け入れられなかった。そこで、研究代表者は入手できる限りの様々な時代と場所の大陸衝突型造山帯に産する高温高圧広域変成岩を偏光顕微鏡と電子顕微鏡を駆使して丹念に調べ、「珪長岩包有物」産出がまれで例外的な事象ではないことを示してきた。また、「珪長岩包有物」産出の事実から高温高圧広域変成岩が地下深部から上昇する際の上昇・冷却に関する新しい速度を求め、大陸衝突型造山帯内での地質過程に関する革新的な知見を得るために、野外地質調査とメルトの過冷却微細組織の再現・保存実験を含めた研究を進めてきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は論文を2本以上完成し、国際誌への投稿を目指したが、投稿直前の段階で、さらにデータを加えた方がよいことが判明した。そのため、追加のデータを取得しようとしたが、コロナ禍のため実験作業が進まず、論文を完成することができず、結果的に投稿もできなかった。また高温高圧広域変成岩の冷却速度を見積もるための基本的なデータの一つである石英結晶中のチタンの拡散速度の値がいまだに研究グループによって大きく異なり、そのため信頼できる冷却速度の見積もりが困難であることも判明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
追加すべきデータを取得し、論文を完成して投稿する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍でデータ収得のための実験作業がほとんどできなかったことと、肺癌に罹患していることが判明し、入院手術が必要であったことが進捗の遅延の原因であり、そのため次年度使用額が生じた。 今年度は追加すべきデータを取得するために、消耗品と旅費等を使用する。また論文の投稿と出版に使用する。
|
Research Products
(2 results)