2018 Fiscal Year Research-status Report
キャビテーション初生解析用非平衡MD・気泡力学融合モデルのための蒸発係数決定
Project/Area Number |
18K03959
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
矢口 久雄 群馬工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (20568521)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キャビテーション / ファインバブル / 気液界面 / 表面張力 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,液相中でキャビテーションの原因となる気泡核が初生に至るまでの気液界面における質量・運動量・エネルギーの輸送速度にかかわる蒸発係数を解明することを目的としている.初生に至るまでの気泡核界面では,連続体力学が無力であることはもとより,その直径が分子平均自由行程よりもはるかに小さいため分子気体力学も適用できず,個々の分子運動を扱うことのできる分子動力学法のみが有効な解析手段となる.本年度は,Lennard-Jones流体を対象物質としてナノサイズの気泡核を分子動力学シミュレーションで再現し,気液平衡状態における蒸気密度や表面張力の定量的評価に取り組んだ.系の上下の分子運動を凍結して上部の壁面をピストンのように動かし,さらに,系の中心部分に局所的な温度制御を行う独自のシミュレーション手法を開発することにより,系の中心に任意のサイズの気泡核を安定的に生成するとともに,ビリアル定理では値が収束しにくい圧力の瞬時値を上壁面にかかる力から評価することで,従来よりも高い精度で系内部の圧力コントロールに成功した.この手法を用いて,小さな気泡核ほど蒸気密度が低下するKelvin効果を気泡核内に確認し,蒸気密度と気泡核サイズとの関係についてデータを取得した.表面張力については,研究代表者が過去にナノ液滴に対して開発した手法を拡張して定量的評価に取り組んでいるが,気相内の分子数が極めて少ないことと検査体積が内側ほど小さいことが影響し,十分な精度での評価には至っておらず,現在,評価手法の改良に取り組んでいる.なお,これらの取り組みと並行して,キャビテーション初生や微小流れに関する基礎的な理論的検討も進めており,表面張力などの基礎物性がキャビテーション初生に大きな役割を担うことなどを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画課題に関わる基礎的な検討をおおむね順調に終え,今後の研究推進に必要な知見が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,ナノサイズの気泡の気液界面における表面張力の定量的評価に取り組むとともに,前年度の分子動力学シミュレーションによって得られた気泡核の気液平衡状態の系の微視的データ(分子の位置と速度)を初期条件として,気泡核中心に向けた真空蒸発シミュレーションを実行する.真空蒸発シミュレーションでは気相から液相に向かう分子の質量流束をゼロにする必要がある.これは,液相側から気相側に向かう分子を気相側で消去する真空境界条件を与えることにより実現されるが,本研究で取り扱う気泡核が非常に小さいことから,真空境界条件を与える適切な位置についても十分な検討を要する必要がある.また,蒸発にともなって液相側の分子が減少するため,その分子を液相側に再注入する適切な手法を開発する.このようにして実行した真空蒸発シミュレーションによって液相からの自発的な蒸発に対応する蒸発質量流束を観測し,蒸発係数を決定するとともに速度分布関数についても知見を得る.
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Research Products
(12 results)