2020 Fiscal Year Research-status Report
船舶推進システムの燃料消費シミュレーションの開発、オープンソース化および実証評価
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18K04579
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
木船 弘康 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90323849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 敏史 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70228584)
北野 庸介 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70334555)
鹿島 英之 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70554939)
米田 昇平 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (50815678)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 燃料消費特性 / 船舶 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度(令和2年度)では、昨年までの作業の遅れを取り戻すため、コードの作成方法について見直しを行った。特に直感的なGUIを持つPSIMをプラットフォームに採用することで、作業効率を上げた。実施した内容を以下に順にあげる。 【推進システムを構成する機器ブロックの作成】船舶の推進システムを構成する機器を記述するブロックをコードで記載する上での定義を行った。具体的には推進軸、原動機エンジン、同期発電機、遊星歯車、AC-Bus、AC-DC変換器、DC-AC変換器、誘導電動機、船内負荷、燃料消費率計算ブロック、である。 【原動機エンジンの効率推定方法の改善】従前の方法では、4サイクルディーゼルエンジンの効率を推定する計算モデルは必ずしも高い精度で推定結果を出せるわけではなかった。この原因を特定し、改善するため、データベース内に取り込む学習対象を変えて計算精度の向上にどのような要素が有効であるかを調査した。その結果、推定対象のエンジンの定格回転数に合わせてデータベースに取りこむ学習データも揃えることが有効であることが判明した。そこで、当該研究で比較的データ数の多い定格回転数900rpmのデータ群のみを利用して他の定格出力を持つ900rpmのエンジンデータを類推したところ、推定誤差を半分以下に抑制できることがわかった。 【電力負荷の分担に関して】AC-Busのように要求される負荷電力を運転中の発電機群に適切に分配するだけでなく、意図的に出力制限をかける機能があれば、計算の幅が広がる。こうした機能を実現するため、能動的な出力分配機能を有するAC-Busブロックの設計を開始した。制御上の理由から、まだ完成には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初3年間で実施予定だったが、本研究を担当する大学院生の健康上の理由から、1年半近く研究の進展が得られなかった。これに加えて感染症対策の観点から、Face-to-faceの打ち合わせが出来なくなり、ますます進行が遅れていた。 しかしながら、今回、研究期間を1年間延長することで、計画時に予定していた内容を少しずつ消化できている。本年度中に計画していたことがおおむね実施が完了する見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
最大の課題は動力・負荷分担を能動的に制御する機能をどのように実現するか、という点であり、ここが本シミュレーションの成否を握ると言ってよい。現在、動力分担制御の考え方について基本的な概念設計を終え、コード化作業中である。 また、シミュレーションの妥当性評価については、実プラント上の問題から困難であることが判明している。これは本研究を通じてディーゼル直接駆動船である「汐路丸」の性能を評価したところ、経年劣化が主因とみられる動力系統の動力損失増加、ならびに船体抵抗の増加が著しく、理想状態をベースとする本シミュレーションとは埋めがたいほどの差を生じることが判明したからである。また、ディーゼルエレクトリック推進船である「神鷹丸」では、昨年度の定期検査ドック中に発生した事故により、プロペラ特性が若干変わってしまったため、建造当時の性能が得られなくなってしまった。このため、「汐路丸」同様、理想状態であるシミュレーションの結果とはそもそも揃うことが出来なくなった。以上のことから、本研究では、実船データを用いた評価は最小限にとどめることとした。
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Causes of Carryover |
当該研究を担当する大学院生の健康上の理由から、研究の進捗が1年半ほど停滞した。これに伴い、当初予定されていた経費の支出が少なかったため、繰り越しが発生した。しかしながら、これまで可能な範囲内で実船データの収集も行ってきたため、主な作業内容はプログラムの作成と、データ解析である。したがって残りの予算は、主に膨大なデータ整理の実施にあてる(人件費)。
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