2018 Fiscal Year Research-status Report
ディラック電子系アンチペロブスカイト酸化物薄膜の作製と電子状態評価
Project/Area Number |
18K04946
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
簑原 誠人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70728633)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化物エレクトロニクス / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、極めて高い電子移動度を持つディラック電子を駆使した、次世代エレクトロニクス応用を目指した研究が盛んに進められている。本研究では、そのようなディラック電子を有する物質として「アンチペロブスカイト酸化物」に着目する。この物質は、3次元的なディラック電子を持つと理論的に予言され、幅広い応用可能性が期待されている。ディラック電子に基づく機能活用のためには、未だ理論上想定されるに留まっているアンチペロブスカイト酸化物におけるディラック電子特有の電子状態を実験的に明らかにする必要がある。そのような電子状態評価やデバイス応用において不可欠である薄膜化に関して、これまでの先行研究では作製に成功しているかどうか未だ疑問の余地が残る。そこで本研究では、①パルスレーザー堆積法によるアンチペロブスカイト酸化物薄膜の作製、および②作製した薄膜におけるディラック電子特有の電子状態を直接観測することを目的とする。 初年度では、必要なターゲット材料を購入し、パルスレーザー堆積法による薄膜化を開始した。薄膜作製に必要な基板の選定、表面処理技術の確立を行なったのち、製膜時の酸素分圧および基板温度の最適条件を探索することで、平坦な単結晶表面を示唆する電子線回折パターンが得られた。作製した試料について、X線構造解析や、放射光を用いた異常散乱などの実験を行うことで、結晶構造がアンチペロブスカイト構造であることが明らかとなった。さらにX線光電子分光測定による価数や組成分析を組み合わせることで、特有の化学状態について明らかにした。これにより、アンチペロブスカイト酸化物薄膜の作製手法が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り薄膜作製に成功し、特に電子状態評価を通して、アンチペロブスカイト酸化物では、構成する金属イオンが酸化物としては異常な価数を示すことが明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進める上で、構成するスズ元素が高温プロセスで大量に抜けるため、特に製膜温度に関する最適条件が非常に狭く、角度分解光電子分光測定に必要な品質の表面を得ることが困難であることであることが明らかとなった。そこで今度の方針として、低温でも高品質な表面が得られるかどうかについて明らかにするため、他のスズ酸化物についても研究を展開する計画である。
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Causes of Carryover |
消耗品である薄膜作製用基板の単価(6,800円)に対して、残金がわずかに不足したため、次年度と合わせて使用する計画である。
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Research Products
(23 results)