2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05356
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樺山 一哉 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (00399974)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シアル酸 / 膜流動性 / 脂質ラフト / 相分離リポソーム / 合成糖鎖 / FRAP解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度は、感染細胞における脂質ラフトの機能および構造解明を計画した。まず細胞の脂質組成を解析するにあたり、感染細胞の他に糖転移酵素遺伝子改変細胞ならびに糖転移酵素欠損MEF(マウス幹細胞由来線維芽細胞)を用いて、網羅的に糖脂質の組成解析を行った。その結果、検討した細胞ごとに糖脂質組成が異なることが示された。 さらにこれらの細胞に対して、細胞膜を染色する蛍光プローブであるDiIC18、あるいは一部のラフトに局在することが示されているGPIアンカー型タンパク質CD59にEGFPを融合したタンパク質を一過性に遺伝子発現させ、FRAP(光褪色後蛍光回復法)により膜流動性の変化を計測した。その結果、シアル酸が低下している細胞(GM3生合成酵素欠損細胞)においてCD59の膜流動性が低下するという結果が得られた。 この知見をもとにして、H32年度の計画に入れるセンサーセルに提示するシアル酸を非還元末端に有する、糖鎖リガンドの合成を先に進めた。シアル酸はガラクトースへの結合位置によりヒトインフルエンザウイルス(例:H1N1)、あるいは鳥インフルエンザ(例:H5N1)の認識が異なることが知られている。そこでH1N1に結合するα2,6結合シアル酸ならびにH5N1に結合するα2,3結合シアル酸を有する3糖の還元末端にハロアルカンリンカーを結合した糖鎖HaloTagリンカーの合成を行った。現在、上記2つの目的化合物においてシアル酸とガラクトースの2糖合成まで進行中である。またこれに並行して、CD59にEGFPの代わりにHaloTagを融合したプラスミドを構築し、この遺伝子を発現させることでラフトに集中的にシアル酸が局在することを想定したセンサーセルの作成も行い、局在の解析中である。 現在はその他の細胞のラフト画分の脂質解析および、相分離リポソームの顕微鏡下での作成と可視化も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度においては超遠心分離機の不具合などで完全に計画は達成されていないが、一部の有効なデータを元にH32年度に目標として掲げたセンサーセルのプロトタイプの作成指針が示されたことで、最終年度への道筋が大きく開けたため。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は概ね研究計画に沿って実験を進行したが、当該年度に相分離リポソームの可視化が成功したことにより、H31年度の計画である人工細胞における脂質ラフトの再構築を先んじて進めることが出来た。そこで今後は合成糖鎖を液体秩序相(Lo相)に局在させたプロテオリポソームを作成する。さらにインフルエンザウイルス結合タンパク質であるヘマグルチニン(HA)を購入し、これにNHSリンカーを有する蛍光分子を修飾して、上記人工細胞とHAの結合量を評価する実験に展開する。この蛍光標識HAはウイルス感染細胞や感染を想定した糖脂質改変細胞にも利用できるため、適宜、結合評価を行っていく。
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