2019 Fiscal Year Research-status Report
放線菌由来新規トロイの木馬抗生物質の生合成と作用機構の解析
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18K05385
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅水 俊平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任講師 (90709057)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放線菌 / 抗生物質 / 複合培養 / シデロマイシン / ミコール酸含有細菌 / 二次代謝産物 / 微生物間相互作用 / シデロフォア |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌Streptomyces sp. HOK021は、ミコール酸含有細菌Tsukamurella pulmonis TP-B0596との複合培養時に、特異的に新規シデロマイシン様抗生物質harundomycin(HDM)を生産する。HDMは脂肪酸合成酵素FabF阻害剤・platensimycin(PTM)が、シデロフォア・enterobactin(ENT)様の構造とチオエステル架橋によって連結したユニークなキメラ抗生物質であった。 本研究では、生合成機構に関する知見(HDM生合成遺伝子の同定、特にハイブリッド化に関与する機構の解明)、作用機序に関する知見(鉄欠乏下でのHDMの生物活性)、新規シデロマイシン類の探索法の開発(マスフラグメンテーションパターンを指標にした探索法)を通じて、抗生物質にシデロフォアを連結した新規な「トロイの木馬」型抗生物質の生物生産に応用展開を目指した研究である。 2018年度:生合成機構に関する知見を得るために、次世代シーケンス(HiSEQ)によりショートリードシーケンスデータを取得し、de novoアッセンブリにより得られたコンティグ中に、既知のplatensimycinとenterobactinの生合成遺伝子の一部を同定した。しかし連結機構に関与する因子はわからなかった。次にHDMが抽出や、精製の行程で生成したシャント化合物ではないことを確認するために、推定生合成中間体であるThioPTM(チオカルボン酸誘導体)を新たにHOK021とCorynebacterium glutamicumの複合培養液から単離・精製し、精製化合物とdehydroENTダイマーと混合し、インキュベートした。その結果、HDMが生成しないことを確認した。以上の結果から、HDMは細胞内において合成されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の実験計画通りにはシーケンスデータのクオリティーの問題などから進んではいないが、アプローチを変更することにより以下の知見が得られた。 2019年度:生合成機構に関する知見を得るために、新たにStreptomyces sp. HOK021とTsukamurella pulmonis TP-B0596の複合培養を26℃、150 rpm(以前は30℃、200 rpm)で行うことにより、シデロフォアであるENT部位がダイマーである物質の他に、新規なモノマー及びトリマーの化合物の単離・精製に成功した。 作用機序に関する知見を得るために、HDMの活性を、様々な検定菌を鉄制限培地を用いて培養し比較評価した。Micrococcus luteusに対して鉄制限下において活性が2-4倍上昇することが確認され、シデロマイシン様の活性があることが示唆された。 新規シデロマイシン類の探索法の開発を目的とし、既知のシデロマイシン類のマスフラグメンテーション情報を収集するために、寄託菌株より生産菌を9株取得した。様々な培養、分析法を検討し、既知シデロマイシン類(ferrimycinを二株とsalmycinを一株)の生産を確認し、マスフラグメンテーション情報を取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで作用機序に関する知見を得るために、様々な検定菌を鉄制限培地を用いて培養し、HDMの活性を比較評価した。HDMはMicrococcus luteusに対して鉄制限下において活性が2-4倍上昇することが確認され、シデロマイシン様の活性を有することが示唆された。そこで新たに精製できたモノマー及びトリマーのHDM類縁体について同様に活性評価を行い、シデロフォア部位の構造と生物活性に相関があるかを検証する予定である。 これまで新規シデロマイシン類の探索法の開発を目的に、シデロマイシン類のマスフラグメンテーション情報を収集を行った。菌株寄託機関より生産菌を9株取得し、様々な培養、分析法を検討した結果、既知シデロマイシン類(ferrimycinを二株とsalmycinを一株)の生産を確認した。今後は得られたマスフラグメンテーション情報をもとに、モレキュラーネットワーキング法などを用い、類縁体の探索をラボ保有の放線菌培養液中から行い、新規なシデロマイシン類縁体の同定、単離精製を目指す予定である。
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