2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K05520
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山崎 正夫 宮崎大学, 農学部, 教授 (80381060)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 尿酸 / 共役リノール酸 / 脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪細胞による尿酸産生に対する脂肪酸の効果を評価した。脂肪細胞は肥満時に惹起されるストレスを想定して、低酸素ストレス、酸化ストレス、炎症性サイトカインによる刺激を行った。脂肪細胞へ分化成熟後の3T3-L1細胞の尿酸産生は培養中の酸素濃度を1~5%に下げることで上昇し、2.5%で最も顕著であった。しかしながらHIF-1分解阻害剤である塩化コバルトの添加によってはこのような結果は再現できなかった。また、TNF-αの刺激によっても有意に上昇した。酸化ストレスとして、過酸化水素による刺激を行ったが尿酸産生には明確な影響は認められなかった。これらのうち、低酸素下での尿酸産生亢進作用は顕著であったため、低酸素ストレス下での脂肪酸の影響を評価した。脂肪酸としてリノール酸と共役リノール酸 (CLA) であり、CLAは9cis, 11trans型と10trans, 12cis型の3種を評価に用いた。いずれも200 μMまでは細胞毒性は認められず、この濃度以下での評価を実施した。脂肪酸の添加タイミングは脂肪細胞の分化成熟過程段階と分化成熟後の2つのパターンを設けた。その結果、分化成熟過程における10trans, 12cis-CLA処理によって尿酸産生は抑制された。また、分化成熟後においては通常酸素濃度では脂肪酸は尿酸産生に影響しなかったが、10trans, 12cis-CLAは低酸素によって誘導される尿酸産生の亢進を抑制した。以上の結果から、10trans, 12cis-CLAは肥満ストレスによる尿酸産生の亢進を抑制する可能性が期待され、今後生体レベルでの検証を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、当初提案していた尿酸定量系の感度に問題があることが判明し、HPLCを用いた定量系とすることで問題が解決した。本試験は、肥満時における尿酸産生を食品成分で抑制することに目的があるため、肥満条件でのどのようなストレスが尿酸産生に影響を及ぼすかを明らかとする必要があった。本年は低酸素によるストレスが強く尿酸産生を亢進することを示し、肥満と尿酸産生の撹乱を結びつける実験系を確立することができた。さらに、本試験でターゲットにしている機能性脂質として、共役リノール酸の効果を評価することができ、低酸素での尿酸産生亢進を抑制できることを見出した。これらの内容は当初の計画通りであり、申請者の予測するものと一致していた。他の脂肪酸の効果や、肥満モデル動物を用いたin vivoでの評価に関しては結果には至っていないが、次年度に向けて研究を実施できる体制が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪細胞を用いた試験によって、低酸素ストレスが尿酸産生を亢進作用をもたらし、共役リノール酸がその阻害作用を有することを明らかとした。脂肪酸の構造的な視点からみると、共役リノール酸でも活性を持たないものもあり、リノール酸でも活性がなかった。そのため、脂肪酸による尿酸産生抑制の構造活性相関を評価し、活性発現に重要となる構造特性を明らかとしたい。また、現時点で効果を認めた共役リノール酸は肥満モデル動物における尿酸産生抑制作用を実証したい。また、低酸素ストレスによる尿酸産生を亢進作用をもたらす細胞内シグナル機構について評価する。現在、低酸素ストレスではHIF-1の安定化が誘導できることを示した一方で、HIF-1の安定化剤である塩化コバルトでは同様の結果は再現できていない。そのため、様々な代謝系の阻害剤を用いながらHIF-1依存性、非依存性両方の経路を考慮に入れながら研究を推進し、共役リノール酸が標的とするシグナル伝達経路についても明らかとしたい。
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Causes of Carryover |
低酸素下での尿酸産生亢進をに関する詳細な作用機序と動物実験での使用がなかったため、次年度に繰り越して実施する。低酸素下での試験については、低酸素関連因子の発現解析のための、遺伝子解析およびタンパク質発現解析試薬を購入し、動物実験では動物および飼育機材の購入を予定している。
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