2018 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム解析で明らかにする、日本固有カンキツと海外由来カンキツの交雑過程
Project/Area Number |
18K05623
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
永野 幸生 佐賀大学, 総合分析実験センター, 准教授 (00263038)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅史 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (00305161)
古藤田 信博 佐賀大学, 農学部, 准教授 (50355426)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | カンキツ / タチバナ / シークヮーサー / 日本固有 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
佐賀大学の代表的研究活動として「カンキツ遺伝資源コレクション」がある。コレクションを主な対象として100系統以上を部分ゲノム解読法RAD-Seqで解析した結果、更に詳細に解析すべき、日本国内の系統が見つかった。一つは、多系統からなることを明らかにした、日本に野生している「日本固有のカンキツ」、つまりタチバナ、シークヮーサー(琉球語表記)である。もう一つは、我々が発見した、日本固有カンキツと海外由来カンキツの交雑の結果で生まれた栽培種である。本課題では、これら国内の興味深いカンキツを対象に、RAD-Seqよりも強力な全ゲノムリシーケンシングを、約30系統を対象に実施し、日本のカンキツの歴史を知ることを目的とする。 本年度は、日本固有カンキツであるタチバナについて、高知県の自生地を調査した。タチバナ自生地の群内遺伝的構造を知ることが主たる目的である。なお、これら植物は天然記念物であるので、許可を得た上で、教育委員会の立ち会いのもと、採集を行った。 次に、ゲノム解析に必要なDNAの精製を行った。これまでカンキツから、ゲノム解析に適した高純度DNAの精製を日常的に行ってきたので、これら材料からのDNA精製は容易であろうと推定していた。しかし、これら材料については精製が容易ではなく、DNA精製過程でDNA分解がおこることが判明した。DMA分解を防ぐ方法を検討したが、その方法を見いだすことはできなかった。そこで、DMA分解を防ぐことは諦めて、分解DNAを除くことで、高純度DNAを精製することにした。数々の方法を検討した結果、後者の方法の開発には成功した。 得られたDNAを全ゲノムリシーケンシングに供したところ、配列データが得られることがわかったので、この問題は解決した。つまり、今後の研究の妨げになる問題は解決し、今後の研究発展のための道筋ができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
佐賀大学は、先端基盤研究共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)に採択された。これの立ち上げに私が深く関わり、そのために時間を費やしてしまい、研究時間の確保が難しかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
「我が国の興味深いカンキツ」を全ゲノムリシーケンシングし、得られたデータをバイオインフォマティクス解析する。精製したDNAを研究受託機関に送り、受託機関から全ゲノムリシーケンシングのデータの提供を受ける。1サンプルあたり12Gb以上(ゲノムサイズの30倍以上)の配列を得る。比較対照については、我々や他の研究グループが既にデータ取得したものを主に用いる。具体的には、タチバナ・シークヮーサー・コウライタチバナの解読を行う。本土のタチバナおよびシークヮーサーは無性生殖するが、原木が異なるいくつかの系統に分かれるので、各々の系統から一点を解読する。有性生殖する沖縄のタチバナは数点を解読する。計10点程となる。また、我々が発見した、日本固有カンキツと海外由来カンキツの交雑の結果で生まれた栽培種についても、計10点程を解読する。一般的なバイオインフォマティクス解析(遺伝的類縁関係、admixture解析など)を行い、これらの過去の歴史を調べる。特に、日本固有カンキツのどの系統から、どこのDNA領域が、国内栽培種に移入したかを調査することが重要である。栽培種は人により選抜されたはずなので、遺伝子移入に何らかの傾向がある可能性が高いからだ。この情報は、我が国のカンキツの利用に活かすことができる。 また、九州、特に島嶼部には、特産化できる可能性がある栽培種があり、これらも日本固有カンキツとの交雑可能性がある。また、タチバナ自生地の群内遺伝的構造など、日本国内のカンキツの未調査の問題がある。そこで、九州の在来カンキツ産地や宮崎のタチバナ自生地について現地調査を行い、部分ゲノム解読法RAD-Seqに供し、更に詳細に解析すべき対象を見つける。RAD-Seqの結果、更に詳細に解析すべきとしたもの計10点程を全ゲノムリシーケンシング解読およびバイオインフォマティクス解析に供する。
|
Causes of Carryover |
佐賀大学は、先端基盤研究共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)に採択された。これの立ち上げに私が深く関わり、そのために時間を費やしてしまい、研究時間の確保が難しかった。 次年度の研究を行うための実験準備は終わっているので、次年度は着実に使用できる。
|
Research Products
(8 results)