2020 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム解析で明らかにする、日本固有カンキツと海外由来カンキツの交雑過程
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18K05623
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
永野 幸生 佐賀大学, 総合分析実験センター, 准教授 (00263038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅史 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (00305161)
古藤田 信博 佐賀大学, 農学部, 准教授 (50355426)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カンキツ / タチバナ / シークヮーサー / 日本固有 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本固有のカンキツ及び、日本固有カンキツと海外由来カンキツの交雑の結果で生まれた栽培種について、全ゲノムリシーケンシングを実施し、これら日本のカンキツの歴史を知ることを目的としている。 沖縄以外のタチバナ、及び、シークヮーサーは、交雑胚ではなく、親細胞由来の胚、つまり珠心胚で増殖する。また、接ぎ木で繁殖させることもある。つまり、体細胞クローンとして増殖することが多い。体細胞は遺伝的に均質であると考えられている。そのため、接ぎ木・挿し木・珠心胚実生が農業に活用されている。しかし、枝変わりという現象がよく知られており、これは体細胞の遺伝的変化である。この体細胞が遺伝的に変化をするメカニズムを知ることは重要である。 本年度は、日本固有カンキツのうち、沖縄以外のタチバナのゲノムがどう変化するについての研究を行った。これら沖縄以外のタチバナは体細胞クローンとして増殖すると考えられる。そこで、タチバナの複数の個体について、全ゲノムリシーケンシングを実施した。この中には、タチバナの自生地である高知県土佐市松尾山で採取した10個体を含めた。ヘテロ接合性の変化を調べた結果、沖縄のものではないタチバナについて、次のことが分かった。1) 予測通り体細胞クローンとして増殖する。原木(体細胞クローンが由来する一本の木)が異なる系統が少なくとも3系統ある。2) 高知県土佐市松尾山のタチバナ10個体全ては、一本の原木に由来する。3) タチバナのゲノムはDNA複製の際のミスや化学物質・放射線によるDNAの損傷によりおこる「ホモ接合からヘテロ接合への変化」よりも体細胞における組換え等でおこる「ヘテロ接合からホモ接合への変化(ヘテロ接合性喪失)」の方が、頻度が高い。 また、今年度は、カンキツのINDELマーカーの活用法について、論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍による研究中断の影響を受け、研究時間の確保が難しかった。また、佐賀大学は、先端基盤研究共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)(H30~R2年度)に採択された。これの運用に私が現場責任者として深く関わり、そのために時間を費やしてしまい、研究時間の確保が難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
「我が国の興味深いカンキツ」を全ゲノムリシーケンシングし、得られたデータをバイオインフォマティクス解析することを行っているが、これを更に推進していく。今年度は、沖縄以外のタチバナの研究に注力したが、この成果も活用して更に研究を行っていく。特に、「ヘテロ接合からホモ接合への変化(ヘテロ接合性喪失)」が、クローン増殖することが多いカンキツにおける主たる遺伝的変化のメカニズムであることがわかったので、この現象にも注目して、我が国のカンキツの歴史を追いかける。 実験手法としては、精製したDNAを研究受託機関に送り、受託機関から全ゲノムリシーケンシングのデータの提供を受ける。1サンプルあたり10Gb以上(ゲノムサイズの約30倍)の配列を得る。比較対照については、我々や他の研究グループが既にデータ取得したものを主に用いる。タチバナ・シークヮーサー・コウライタチバナのゲノム解読を更に進める。また、我々が発見した、日本固有カンキツと海外由来カンキツの交雑の結果で生まれた栽培種についても、ゲノム解読を更に進める。 その際、一般的なバイオインフォマティクス解析(遺伝的類縁関係、admixture解析など)を行い、これらの植物過去の歴史を調べる。また、今年度、ミカン科のサンショウの遺伝的多様性を調べた論文を発表したが、その際に新たに用いたバイオインフォマティクス解析手法(f3統計量等)も今後の研究に用いる。特に、日本固有カンキツのどの系統から、どこのDNA領域が、国内栽培種に移入したかを調査する。栽培種は人により選抜されたはずなので、遺伝子移入に何らかの傾向がある可能性が高いからだ。この情報は、我が国のカンキツの利用に活かすことができる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による研究中断の影響を受け、研究時間の確保が難しかった。また、佐賀大学は、先端基盤研究共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)(H30~R2年度)に採択された。これの運用に私が現場責任者として深く関わり、そのために時間を費やしてしまい、研究時間の確保が難しかった。 次年度の研究を行うための実験準備は終わっており、また、先端基盤研究共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)も終わったので、次年度は着実に使用する。具体的には約30サンプルについて、ゲノム配列を決定し、このために経費の80%程度を使用する。残りは、論文発表等の為の経費とする。
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Research Products
(9 results)