2019 Fiscal Year Research-status Report
球根植物の球根休眠性に進化をもたらした遺伝機構の解明
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18K05625
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
増田 順一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (60452744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比良松 道一 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 准教授 (30264104)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 早咲き性 / 球根休眠性 / 遺伝様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、九州南部から台湾に点在しているテッポウユリ自生集団(屋久島、奄美大島、喜界島、沖永良部島、与論島、久米島、池間島、宮古島、与那国島、石垣島、西表島集団)における早咲き性の地理的形質変異を調べた結果、比較的北方のテッポウユリ集団では年内に開花しなかったが、南方のテッポウユリ集団では10-40%程度の個体が年内に開花し、開花した個体における開花到達日数は播種後233-315日であった。これまで、早咲き性と非球根休眠性とは密接な関係性があることが知られていることから、北方のテッポウユリ集団では球根休眠性が強く、南方のテッポウユリ集団では球根休眠性が弱いのではないかと考えられる。 次に、北方のテッポウユリ集団とタカサゴユリ帰化集団を交配して得られたF1個体について葯の色、葉形指数(葉長/葉幅)、展開葉数および開花到達日数について調べた結果、葯の色はタカサゴユリ型(赤褐色)、葉形指数は両親中間型を示したことからテッポウユリとタカサゴユリとの雑種であることが確認された。また、北方のテッポウユリ集団では播種後年内に開花しなかったが、タカサゴユリ帰化集団ではすべての個体で開花が認められ、開花到達日数は播種後259日であった。また、タカサゴユリ帰化集団の1植物体あたりの花茎数は2本であった。一方、F1個体では展開葉数の増加傾向はタカサゴユリ型に近く、播種後260日で開花が認められ、1植物体あたりの花茎数が2本であった。このことから、早咲き性(非球根休眠性)は優性形質である可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、球根休眠性の地理的形質変異を調査したこと、球根休眠性の表現形質の遺伝的背景を探るためのF1 個体(平成 30 年度作出),F2 個体(平成 31 年度作出)の作出に成功していることから、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
F2 世代において、連鎖地図上に位置付けられた分子マーカーと形質値の相関を調べ、個々のQTL の表現型効果を推定するとともに、球根休眠性の関連遺伝子の近傍に位置する連鎖マーカーを検出する。これらの実証研究から、球根休眠性の適応進化の過程が連続的形質変異(微小な遺伝的変化の累積)であったのか、飛躍的形質変異(少数の主要な遺伝子の 変化)であったのか検証するとともに、QTL の領域を絞り込む。
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Causes of Carryover |
次年度での遺伝解析費用に充てるため、前年度の支出を抑えた。
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