2019 Fiscal Year Research-status Report
海域固有のバイオセメントを用いた、環境負荷の無い革新的な海洋環境保全に関する研究
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18K05695
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
楠部 真崇 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (40403761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 和幸 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (30587853)
青木 仁孝 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (80775809)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオセメント / ウレアーゼ生産菌 / アマモ場 / 海洋環境保全 / 藻場造成 / SDGs14 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、和歌山県日高郡日高町方杭の海砂およびその海砂から単離した細菌株を用いて、円筒型のバイオセメントを試作した。比較的強度の高い固形物ができ、バイオセメントに埋包したアマモ種子の発芽を実験室水槽内で確認できた。円筒型の固形物は、型枠(モールド)の準備に費用と手間がかかるため、大量製造するためにはさらなる改良が必要である。実海域での沈設には数十kg単位の海砂を使用することになるため、コンクリート用ミキサーを用いた造粒化を検討した。様々な試作条件から、30mm径のアマモ種子を含む造粒バイオセメントを得ることができた。アマモ種子や固化反応に必要な単離細菌、尿素、カルシウムは造粒化ミキシング時に同時投入するため、非常に簡単に大量の種子をバイオセメント内に埋包することが可能となった。造立後は陰干しの要領で時間をかけて固化反応させ、アマモ粒子を含む造粒バイオセメントを50kg程度準備することができた。海水温が低下し始める12月に日高町方杭での沈設作業を行った。散布後3月29日に方杭の海底にて50mm以下のアマモの出芽を確認した。この時、天然のアマモはまだ発芽しておらず、多年生のアマモのみが植生している状況であった。その後、順調に成長していることを確認している。 アマモ植生地と非植生地の海砂の色と匂いが異なるため、細菌叢の相違を想定している。また、アマモの発芽には嫌気性条件を必要とする知見があることから、硫酸還元菌が占める割合について注目してメタゲノム解析を実施するところである。予備実験では、およそ2倍程度の硫酸還元菌がアマモ植生地に含まれていることがわかっている。本研究の最終年度は、さらに詳しく解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も懸念していた自然環境での発芽を確認できたことが最も大きな成果である。現在、今後のアマモの成長とアマモ場の広がりを観測するためのマルチコプターを準備しており、新年度からの運用を予定している。また、海砂中の細菌叢メタゲノム解析の準備も進めており、アマモ場再生による海砂の内部環境についても順調に進めている。一方、造粒物の硬度測定方法が確立できておらず、今後治具を利用した測定を検討していく予定である。また、固定カメラでの海洋生物観察には藻類の付着が予想以上に早く観測に支障をきたすため、環境DNA技術を用いた生物群衆のゲノム解析も現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
アマモの生育は水温が上昇する7月程度を目処に枯れ始めることが知られている。今回沈設し、出芽したアマモの定着観測は定期的に枯れるまで実施する。5月には新しい種子を蓄えたアマモ個体が茂るため、次の沈設に向けた種子の回収を行う。本研究で実施した沈設アマモから種子を採取できれば、持続可能なアマモ場再生に期待できる。一方で、播種した種子が100粒程度から十分な種子の確保が懸念される。通常通り、近隣に存在する天然のアマモ場より種子を採取し、次回の沈設試験準備としたい。マルチコプターによる藻場繁殖には、画像解析ソフトによる面積比を算出し、大まかな拡大推移面積を算出する予定である。
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Causes of Carryover |
バイオセメントの大量製造方法に関する技術開発が大幅に短縮されたため、試験資材費用を抑えることができた。一方で、次年度特許出願に向けて準備を進めており、出願費用に充てる予定である。また、英国のweb発信型科学技術雑誌Impactから研究掲載のオファーがあり、2020年春中にプレスされる予定。本Impactは全世界数万機関でダウンロードもしくは購読契約のある雑誌であり、極めて宣伝効果が高いと判断し掲載料に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)