2018 Fiscal Year Research-status Report
白川郷五箇山における屋根を下ろした合掌造り家屋と念仏道場に着目した文化資源の継承
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18K05702
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 乃生 筑波大学, 芸術系, 教授 (40375457)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 合掌造り家屋 / 附属屋 / 民家 / 白川郷 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、白川村における合掌造り家屋の数の変化を資料と現地調査から把握した。集落ごとの数をみると荻町は大きな変化がなく、その他の集落では現象が大きかった。中でも大郷地区は比較的規模の大きな集落が多いため変化が大きい。昭和26(1951)年に41棟あった飯島は民宿を営む1棟のみに、鳩谷は18棟あったものが現在1棟になった。島と荻町の枝村である戸ケ野は昭和48(1973)年にあわせて20棟だったが現在3棟になった。山家と呼ばれる北部では昭和36(1961)年に合計19棟あったものが48(1973)年までの10年余りの間に2棟になり、現在はまったくなくなってしまった。 残存する屋根を下ろした合掌造り家屋について、研究当初は外観から判断することができると想定していたが、実際にはさまざまなパターンがあることがわかり、聞き取り調査を実施して白川村全体の屋根をおろした合掌造り家屋の現状を把握した。白川村全体で13棟の家屋が確認できた。大郷地区(荻町から飯島まで)に最も多く、9棟あることがわかった。南部(御母衣から木谷)は木谷の1棟のみだった。 外観については、合掌造りの屋根をおろした家屋の外観には3種類あることが明らかになった。まず、合掌造りの屋根を下ろして2階を増築したものである。外観から木造とわかるものやトタンや新建材の壁のものがあった。また、1例のみ、合掌材をそのまま残して覆った家屋もあった。いずれも聞き取り調査からもと合掌造りだったとされたもので、特に3番目の事例については外観からは不明である。なお、荻町の一棟は伝統的建造物に指定されている。 聞き取り調査 によると、屋根をおろした時期は木谷では昭和37(1961)年、有家ケ原は昭和38(1963)年、椿原では昭和10年代などばらつきがあった。当時は経済的な余裕がなく全てを建て替えることができなかったという理由が多く聞かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では外観から屋根を下ろした合掌造り家屋が判別できる予定だったが、実際にはすべてを新建材の壁で覆うなどさまざまな事例があり、ヒアリングから特定する必要が生じた。このため初年度は白川村における特定にとどまり、事例の詳細な把握には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の遅れを踏まえて、今年度は五箇山における屋根を下ろした合掌造り家屋の特定と、白川郷における念仏道場と寺の現状把握を併行して進める予定である。
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