2018 Fiscal Year Research-status Report
官・民・市民協働による街路樹の多面的な価値創出と管理の可能性
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18K05711
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
赤澤 宏樹 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (30301807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加我 宏之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00326282)
川口 将武 大阪産業大学, デザイン工学部, 講師 (30298814)
福井 亘 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60399128)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 街路樹 / 官・民・市民協働 / 維持管理計画 / 多面的価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,都市環境の保全,景観形成,生物多様性,防災機能といった街路樹の「存在効果」について,既往文献(E.G.McPherson et.al, 2016)を参考に,北米で普及しつつあるU.S.FOREST SERVICE提供の街路樹データベース・分析ソフト“i-Tree”およびその内部指標を用いて試算する準備を行った。I-Treeの開発者である平林聡氏(Davey Tree/U.S.FOREST SERVICE)を招いた研究会および打ち合わせを行い,日本のデータでの試算方法を検討した。現時点では,京都市,吹田市,神戸市などが比較的データが揃っており,市域~地区レベルで試算できる可能性がある。調査実施に向けて,令和元年度も調整を進める。 一方,令和元年度以降に維持管理計画への展開方法を探るべく,官民協働の可能性についてアンケート調査を実施し,その成果を『沿道住民の街路樹の維持管理への参加意欲に影響する要因の構造』(川口ら,2018)として発表した。本研究では,沿道住民の地域や街路樹に対する意識を把握し,そこから街路樹の維持管理への参加意欲に影響する要因の構造を,沿道住民へのアンケート調査結果を用いた共分散構造分析によって探った。その結果,「地域の価値認識」の意識が高まると「街路樹の価値認識」に対する意識も同時に高まり,互いに影響を及ぼし合いながら正の強い影響を与え合うことがわかった。「街路樹の維持管理への参加意欲」は,「街路樹の価値認識」に強く影響を受け,「街路樹の価値認識」は,「街路樹の課題認識」に及ぼす影響が弱く,「街路樹の管理状態に対する評価意識」,「街路樹の果たす役割に対する認識」に強く影響を及ぼす構造であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
i-Treeが既に実装されている米国と我が国では,街路樹の価値の試算に用いるデータの整備状況が大きく異なる。その補正のため,i-Tree開発者と研究会を開催し,完全では無いながらもI-Treeを用いた試算方法が確認された。この確認作業に加えて,試算に足る街路樹データを持つ自治体の確認および提供依頼に時間を要し,平成30年度内に試算するまでは至らなかった。一方,令和元年度以降の維持換地計画への展開検討に向けて,その基盤となる研究は進み,査読付き論文『沿道住民の街路樹の維持管理への参加意欲に影響する要因の構造』(川口ら,2018)として発表するに至った。 以上のように,研究の進捗に関する年度間の入れ替えが若干あるものの,概ね計画どおり研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる令和元年度は,初年度に予定していたi-Treeでの街路樹の存在価値の試算を行う。加えて,i-Treeには実装されていない街路樹の利用価値の試算を,CVMを用いて行う。 加えて,海外における街路樹評価およびその維持管理計画への反映について,実践自治体の実態を把握すべく,①街路樹の維持管理計画の類型化(文献調査)と,②典型事例への街路樹管理の市民・事業者の協働手法に関するヒアリング調査を実施する。典型事例は①の結果から決定するが,事前調査からi-Treeのデータおよび分析によって街路樹管理戦略(2016)を立案・実践しているカナダ・オークビル市,官・民・市民の協働による街路樹管理を推進している米国シアトル市を現時点では想定している。
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Causes of Carryover |
街路樹データの入力作業に用いるモバイルPCを,2年目となる令和元年度に購入することとしたため。
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