2019 Fiscal Year Research-status Report
陸生スゲ類の繁殖特性を用いた崩壊地植生回復に関する研究
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18K05723
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
荒瀬 輝夫 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (10362104)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 陸生スゲ類 / 緑化 / 自生種 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸生スゲ類の緑化利用に関して、未解明の項目は、①砂れき地・崖地に自生するスゲ類の緑化利用可能性スクリーニング、②種子の最終時期と保存条件、③種子の発芽条件、④異なる立地条件での生育、⑤群落の管理(刈込み・踏圧等)に対する耐性、⑥地域による系統間の遺伝的変異である。本研究では、植生回復・緑化のために陸生スゲ類の導入を行うための当面の課題として、3ヶ年の期間で①~④を実施・解明することを計画している。 これらのうち、2018年度には、台風19号被害による影響で、①の基礎的情報を得るに留まった。すなわち、西駒演習林(木曽山脈北部、標高1230~2650m)における渓畔・崩壊地のスゲ属植物のフロラと垂直分布を把握した。確認された自生種14種の中から、有望な種として、ヒメスゲとアブラシバの2種が抽出された。この知見は、原著論文1報(荒瀬輝夫・内田泰三(2019)信州大学農学部西駒演習林におけるスゲ属植物の垂直分布、信州大学農学部AFC報告、第17号:37-43 )として掲載された。 2019年度には、④異なる立地条件での生育のうち、移植による緑化試験地の設営を行い、生育のモニタリングを開始した。また、②③の準備として上記2種の種子の採集・保存を行った。④について、畑土(黒色土)と花崗岩風化物(マサ土)にて移植栽培を行ったところ、移植1年目には2種とも生育可能であるが、それぞれ適地や分枝特性が異なることが示唆された。この知見は、原著論文1報(荒瀬輝夫・内田泰三(2020)陸生スゲ類2種の緑化試験地造成と初期生育(予報)、信州大学農学部AFC報告、第18号:57-63 )として掲載された。 今後の研究計画として、2020年度には、④移植栽培の生育調査・成長解析を進めるとともに、種子の保存や発芽条件(②・③)を明らかにし、④の残り(播種による初期生育の把握)を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では、1年目に現地調査による陸生スゲ類のスクリーニングと移植栽培試験の開始、2年目(2019年度)に種子の発芽・保存条件の解明、3年目(2020年度)に播種による栽培試験)という段取りであった。台風災害の影響で、移植栽培試験が1年遅れ、種子に関する実験も1年遅れた状況にある。 しかしながら、移植栽培試験がほぼ順調で予想以上に詳細・有益な知見が得られており、播種による栽培試験との比較は「発芽後ごく初期の情報」のみでも充分であることが予想されている。そのため、最終年度で、当初の計画どおりの一定の研究成果を上げることができるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について、2018年度・2019年度に実施できなかった種子の発芽・保存条件の解明と、播種による場合の初期生育の解明(移植栽培との比較)を計画している。すなわち、播種による栽培試験が初期生育の解明のみになる点では規模縮小であるが、それを除くと、全体としての研究の構成に大きな変更はない。 具体的な調査・実験の計画は、以下のとおりである。 ②③種子の発芽・保存条件:2019年度に採集した種子が約1年間保存中であり、今年度採集する分と合わせて、温度・光条件などを組み合わせた発芽試験を行う。 ④播種による初期生育:小規模な試験区において種子を播種し、秋季までの初期生育を調査し、すでにモニタリングしている移植栽培での生育との比較を行う。 これらの知見を総合して、陸生スゲ類の種子や株の採集から緑化までの一連のプロセスについて、技術として提案できることを到達目標とする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の生じた理由は、2019年度の年明け以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により学生を同伴する実験・調査・作業を控える必要があったことにより、人件費を投入する研究活動が制限されたためである。 次年度使用額は、主として、人件費(上記の理由で昨年度に手薄となっていた種子に関する実験・作業)に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)