2018 Fiscal Year Research-status Report
暖温帯林におけるブナ科樹種の構成割合の変化が種子生産の年変動に与える影響の解明
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18K05750
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
平山 貴美子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10514177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 祐子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (20443583)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 種子生産の年変動 / ブナ科樹種 / 暖温帯林 / 密度依存効果 / 種子散布前加害 / コナラ / コジイ |
Outline of Annual Research Achievements |
温帯域の森林の主要構成種であるブナ科樹種の種子(堅果)は、開花直後から結実に至るまで多くの昆虫に加害され、それが種子生産に大きな影響を与えることが知られている。西日本の暖温帯域では、遷移の進行などにより林分におけるブナ科樹種の構成割合が変化しており、それが種子を加害する昆虫の密度や加害パターンを変化させ、各ブナ科樹種の種子生産の年変動に影響している可能性がある。本研究では、このような散布前の種子への加害といった生物的要因の着目し、それが種子生産量の変動に及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目的としている。2019年度の研究成果は以下の通りである。
1.西日本の二次林の代表種であるコナラについて、アベマキ・アラカシといった多種のコナラ属が混交している林と、コナラが優占している林において、コナラの散布前種子の加害に大きく関わっていることが明らかになってきたハイイロチョッキリの個体密度を推定したところ、多種のコナラ属が混交している林においてその個体密度が高く、コナラの種子生産が大きく制限されている可能性が示唆された。
2.京都盆地周辺で分布が拡大しているコジイについて、最近コジイが優占してきた林(宝ヶ池)、京都でも古くからコジイが優占している林(東山)、自然状態の照葉樹林が残存する林(宮崎県綾)において種子生産や種子食昆虫の加害の影響を調べたところ、「東山」と「綾」では、種子食昆虫の影響が大きく、それにより種子生産が大きく年変動していることが明らかとなった。一方で、最近コジイが優占してきた「宝ヶ池」では種子食昆虫の影響はとても小さく、毎年多くの種子が生産されていた。林分の古さが種子加害者の密度に影響し、それが種子生産に影響している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、台風21号の影響により、京都盆地周辺の5ヶ所の調査林分のうち、2林分で殆どの木が倒れ、これらの林分での研究の継続が困難となった。しかしながら、コナラについてこれまで種子加害者として重要であることが明らかになってきたハイイロチョッキリについて、飼育していた多数の個体が羽化してきたため、各個体がどのくらいのコナラ堅果を加害するのかということをかなり正確に計測することができた。これにより、コナラの個体レベルでのハイイロチョッキリの個体密度を推定する手法を確立することができ、これまで取ってきたデータを含めて、コナラの種子生産に対する生物的要因の経年的な影響について定量的に求めることが可能となった。またコジイの種子加害者について、詳細な観察、DNA分析、飼育実験により、まったく新しいブナ科堅果の加害者であることが明らかとなってきている。このように、これまでデータを蓄積してきた各樹種について定量化に関わる詳細な研究を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究を行ってきた京都盆地周辺の5林分のうち2林分は多くの木の倒壊のため、研究を継続することが困難になってしまった側面もあるが、コナラとコジイについては、詳細な種子食昆虫の動態などの解明を元に、生物的要因の定量化を行い、論文の作成を行う。また樹木個体と種子食昆虫の相互作用をさらに明らかにするため、倒壊を免れた個体とともに、新たな調査個体の選定も行い、継続的な種子生産の年次変動の調査を行っていく。さらに、コジイと並んで暖温帯林のブナ科構成種として重要なアラカシ、スダジイを新たに調査対象として加え、種子生産に関わる生物的要因の大きさの評価や年次変動に与える影響について調べていく。またコナラとアラカシについては、樹体内の資源変動が個体の繁殖量にどのように関わっていくかについても評価していく。
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Causes of Carryover |
次年度は、2018年度の調査地の倒壊に伴って、新しい調査地、調査木などの設定について、費用がかかる。また消費税も上がるため、物品費の購入費が予想よりも大きくなる可能性ある。また樹体内の資源量についてより詳しく調べるため、サンプル数、対象樹種数を増やすす予定にしている。このため予算を確保した。
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Research Products
(1 results)