2018 Fiscal Year Research-status Report
水産増養殖事業を介して移動する海洋生物の実態―環形動物多毛類から読み解く―
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18K05777
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大越 和加 東北大学, 農学研究科, 教授 (20233083)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環形動物 / 多毛類 / 養殖貝類 / 非意図的導入 / 穿孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間活動による生物の非意図的導入がどの程度みられるのか、そして、その影響について解析することは、今日、世界中で散見される生態系に対する人為的な影響を議論する上で欠かすことができない。水産増養殖を行っている有用貝類の貝殻に穿孔して生息する環形動物スピオ科多毛類を用いて調査することにより、貝類とともに移動する非意図的導入生物の現状とその影響を探ることを目的とする。今年度、調査を行った結果、貝類に生息する種群の中に種の同定が混乱している種が存在することが確認された。 それら複数の種について、北アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、東アジア(日本、韓国、中国)の主要養殖国においてそれぞれの国地域で貝類の侵蝕状況を記録し、その後、貝類より多毛類を摘出し、形態学的特徴、生態学的特徴を調べ、同時に遺伝学的解析を行ってきた。とくに今日、世界中に分布が報告されている種群については、同じ領域で遺伝子配列を調べるなど、同一の手法を用いてデータを集積した。今後、解析を続ける予定である。 これまで1種だと同定されてきた種、Pseudopolydora antennata は、これまでの結果より、最低5種が含まれていることが判明した。このような混乱が他の種においても生じている可能性が高い。種の同定の混乱は、その後の生物学的解析の混乱に直結するため、今後、正確な種についての解析結果を論文化するなどの公表が望まれる。 種を正確に確定した上で、非意図的移入種の影響について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた海外での調査が一部実施できなかったために資料が採集できずに解析が遅れている。今後、計画通りに実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた海外(アジアとヨーロッパを中心)の海域でのサンプリングを行い、対象となる種群を採集する。それら複数の種について、同様に形態学的特徴、生態学的特徴を現場で解析し、同時に、遺伝子解析を行う。種の同定の混乱が推察される種のサンプルについて、さまざまな海域で比較検討し、結果を考察する。 来年度、結果を国際会議(International Polychaete Conference)で発表する予定であり、参加登録済みである。会議中に他の研究者と同テーマについて議論する。 国内の学会等でも結果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
計画していた海外調査とそのサンプルを使っての物品費が未使用のため、次年度使用額が生じた。今後、予定していた通りの調査を行う予定である。
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Research Products
(8 results)