2019 Fiscal Year Research-status Report
Diversity of oceanic zooplankton in the subtropical Pacific
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18K05804
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
喜多村 稔 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 技術研究員 (00392952)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動物プランクトン / 亜熱帯外洋 / 低気圧性渦 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、計2航海のフィールド調査を実施した。6月には研究船「みらい」を用い、測点KEO (32.3N, 144.6E) において音響式プランクトンレコーダー(AZFP)による動物プランクトンの微細分布観測とネット採集を行った。さらに7月には「白鳳丸」を用いて、測点KEOの北東に存在した低気圧性渦の物理構造と関連づける形で動物プランクトンの群集組成や分布様式を明らかにする調査・採集を実施した。白鳳丸航海の物理観測では、密度躍層の下部に乱流強度の強い層が認められ、その深度は渦内部の湧昇構造に対応する形で水平的に変化していた。また、この乱流層に対応して、高いクロロフィル蛍光が認められた。動物プランクトンに関しては、AZFPを用いた鉛直微細分布計測、ビジュアルプランクトンレコーダー(VPR)を使った動物プランクトン分布の鉛直断面観測、ネット採集によりデータおよび標本を採取した。このうちVPR観測は、船を航走させながら繰出し・巻き揚げを連続的に行う曳航観測で、上記の乱流層付近での動物プランクトン分布や組成の変化を明らかにすることを目的とした。帰航後は、主として環境データ取り纏めとともにVPR画像解析を進めた。 本研究の目的のひとつに、アーカイブ標本を用いた亜熱帯性動物プランクトン出現種のインベントリ作成がある。昨年度に引き続き、時系列観測点S1(25N, 145E)における層別採集試料を用いて、主として管クラゲ類とオキアミ類について検鏡作業および多様性解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は計2航海に参加し、黒潮再循環域において集中的にデータおよび試料採集が出来た。本研究では、亜熱帯外洋域における動物プランクトンの多様性に影響を与える要因のひとつとして物理環境に注目している。7月の白鳳丸航海では、これまでに行ってきたCTD観測による環境把握に加えて、乱流など微細な空間スケールの海洋物理観測を行う研究チームと共同で研究を実施できた。これら微細スケールでの物理環境データと対比を可能とさせるため、動物プランクトン分布も音響(AZFP)および光学的(VPR)手法により、1~数mスケールでの空間解像度で鉛直分布様式を把握するためのデータセットが得られている。VPRで得られた画像解析は、当初は自動抽出されるプランクトン画像が少なかったが、画像処理時に輝度や閾値を調整することによりプランクトン画像の抽出数を増やすことが出来た。2018年度から引き続き行っているアーカイブ試料の検鏡は、2018年度とは異なる季節の試料を使ってデータ取得を行っている。これらの状況により、本研究は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年7月に行われた白鳳丸航海のデータ(1)音響を用いたバルク動物プランクトン分布、(2)VPR取得画像による分類群別の動物プランクトン分布、(3)環境データ、(4)環境と動物プランクトン分布の関連、の解析に注力する。音響解析はAZFPにより取得されたデータに加えて、船底ADCPデータを使った散乱強度の水平分布解析を補足的に行う。VPRデータ解析は、抽出されたプランクトン画像のマッピングが中心となる。音響および画像の両手法によって得られる動物プランクトン分布情報は、主として、低気圧性渦内部で今回観測された乱流強度の強い深度層との関係に焦点をあてて解析を進める。 プランクトンネットサンプルを使った解析は、(1)時系列観測点S1において2010~2012年に得られたアーカイブ層別採集標本、(2)本研究期間中に得られたNORPACネット標本、を用いて2019年度に引き続き検鏡作業を進める。本研究の最終的な目標は広範な分類群をカバーする出現種インベントリの作成であるが、分類群毎に知見がまとまった段階で論文化を進め、知見の蓄積を進める。 2020年度のフィールド調査として、2021年2-3月に西部北太平洋の亜熱帯海域を広範に調査する研究航海に参加を予定する。本航海では主としてNORPACネットを用いた標本採集を実施する。
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Causes of Carryover |
以下2点により次年度使用額が生じた。(1)7月の白鳳丸航海において、ビジュアルプランクトンレコーダーのレンタル費用を当初の見積よりも安く抑えることができた、(2)音響式プランクトンレコーダーのバッテリー購入を検討していたが、前年度まで利用していたバッテリーに2019年度の観測が充分出来るだけの電圧が残っていることが解ったため購入しなかった。この次年度使用額は、2021年2-3月の調査航海における消耗品購入や論文のオープンアクセス費用などに用いる。
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