2018 Fiscal Year Research-status Report
ノカルジアの魚類マクロファージ内における生存戦略に関する研究
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18K05805
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
嶋原 佳子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (50570115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西木 一生 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 日本学術振興会特別研究員 (70817048)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ノカルジア症 / ブリ / カタラーゼ / SOD |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主に侵入した微生物はマクロファージに貪食・殺菌されるが、病原細菌の中にはこの殺菌作用から回避する機構を持つものが存在する。ブリ属魚類のノカルジア症原因菌もこのような機構を有しており、マクロファージを足がかりに生体内での感染を広げ、主要な症状である肉芽腫を形成すると考えられている。このように、マクロファージ内での殺菌抵抗性機構はノカルジア菌の重要な病原性因子の一つであり、本機構の解明が感染防除対策を講じる上で極めて重要である。本研究では、この機構のうち、活性酸素種に対する抵抗因子である解毒酵素に着目し、ノカルジア菌の病原性における役割を明らかにする。 H30年度は、ノカルジア菌の解毒酵素、特にスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)とカタラーゼの遺伝的・生化学的特徴を把握するためゲノム解析を行うとともに培養菌とその上清を対象に酵素活性を調べた。ゲノム解析では、SODとカタラーゼ遺伝子をそれぞれ2種類ずつ特定することができ、その塩基配列はノカルジア菌株間でほとんど違いがないことを確認した。酵素活性については、SODは菌体、上清とも検出限界以下であったが、カタラーゼは菌体で活性が確認された。カタラーゼ活性の強度は菌株間でわずかに差異があった。今後は、宿主の細胞内でどの遺伝子が発現しているのかをモニタリングするとともに、病原性に強く関与していると考えられる遺伝子を欠損させた菌株を作出し、その特性を詳しく調べる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素活性の調査では細胞の破砕液の調製に時間を要すると考えていたが、関連する文献を参考に条件を決定し、滞りなく実験を進めることができた。計画していた試験は一通り行い、結果も得られたが、菌株間で酵素活性の強度に違いがあった理由については年度内に詳しく調べることができなかった。この点については今後タンパク解析などを実施したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
感染の際に各遺伝子がいつどのように働くのかを明らかにするため、ゲノム解析で得られた各遺伝子の情報を元に定量PCRのプライマーを設計し、検出・定量系を開発する。並行してブリのマクロファージの培養を試み、試験管内におけるノカルジア菌の動態を把握するための準備を行う。
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Causes of Carryover |
細菌を破砕するための装置(ソニケーター)を計上していたが、所内の古い機器を修理することで実験を進めることができたこと、研究を進める上であまり大きな問題が生じず打ち合わせのための出張が必要にならずメールや電話で済ませることなどから、60万円弱の次年度使用額が生じた。使用計画としては、リアルタイムPCRの開発に必要な消耗品の購入に充て、当初の計画よりも特異性の高い検出系の開発を試みる。
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