2018 Fiscal Year Research-status Report
Resilience Assessment of Food System in a Major Disaster and it's Improvements
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18K05850
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
森田 明 宮城大学, 食産業学群(部), 教授 (70292795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 宗徳 宮城大学, 食産業学群(部), 准教授 (50553864)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レジリエンス / 大規模災害 / 食料アクセス / フードシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,熊本震災を中心に大規模災害時の「食」に関する資料の収集と,熊本地震の現地調査とその検討を中心に行った。以下詳細に示す。 計画していた文献調査は,随時行っった。 計画していた現地調査は,益城町,熊本県,熊本市など公的機関からのヒアリング調査を実施した。その結果,以下のような知見が得られた。すなわち,熊本地震では,熊本地方の住民にはこうした災害への備えがなく,また,地震そのものも前震と本震というように同規模の地震が間隔を置いて発生したために,前震への対応しているところに,加えて本震への対応が求められ,チグハグになってしまった感がある。ただし,地域が決して広域ではなく,交通も大きく遮断されることもなかったため,被災のなかった周辺地域等から助力によって食料事情の回復は早かった。それは熊本市の繁華街の回復の早さによく現れていると考える。また,熊本市内の民間企業への震災時の対応についてヒアリングを行ったところ,当該企業は他県に工場が有ったこちによって調達の被害を受けない工場が確保でき,また,そのことにより熊本地方の被災地に食を届けることができたという。本人の弁によれば,被災を受けたことで操業停止するよりは,より積極的に操業を行うこととしたといい,それは,日頃から接している消費者への,地元の企業としての責任であるという。被災者の持つレジリエンスとして至言である。 これらの調査と,東日本大震災で経験した私たちの知見とを合わせて,研究分担者と検討を行ったところ,災害時のレジリエンスとして,地元の「食」にかかわる民間企業や農家の持つ回復への意思というものの大きさを仮説とすることとした。 また震災時の消費者行動について,いくつかの文献より仮説を立て,今後の検討課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献については,災害時の「食」についての文献をできるかぎり広く収集した。ただし,災害時の食は,災害対応の一部であるため,文献の中での扱いは少ない場合が多く,このことからのみ普遍化するのは難しい。 予備的な現地調査については,当初予定していた熊本地域の調査を行い,大きな成果が得られた。特に「食」にかかわる民間企業の役割についての仮説が立てられたことは特筆すべき成果である。ただし,熊本地震の「食」に関するオペレーションは,現地としては,益城町や熊本市があるが,県と共同で対応にあたっていた九州農政局についてヒアリングができなかった。というのは,そのインフォーマントがすでに農林水産省本省にもどっていたからである。このことについては,次年度の課題としたい。 今回は予備的調査という位置付けから,震災時の熊本市内の消費者に関する調査は行っていないものの,熊本市や熊本県からのヒアリングでは大きな混乱はなかったと聞いた。ただし,益城町を初めとして,多くの市町村で炊き出しや食料の配布が行われており,このことの検討は次年度の課題とする。。 民間企業の活躍の視点からは,地元食品企業の災害時における,原状回復への意思というものをヒアリング調査で確認できた。地元企業として,消費者とface to faceの関係にあることから,何か貢献しなければならないという経営者としてのっぴきならない判断を語ってくれたことから,我々は仮説を導くことができた。 宮城県内での調査はできなかった。次年度に課題を持ち越す。 震災時の食を巡る消費者行動については,文献等から仮説を作成した。ただし,これを実証するための数理モデル及び予備的実験については,まだ行っておらず,次年度への持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は,以下の通り研究を行うことを予定している。 (1)前年度できなかった,宮城県内の食への対応の調査を実施する。宮城県や仙台市,あるいは,周辺市町村へのヒアリングと,主要企業への調査を実施する。また,前年度検討した「仮説」に基づいて実施する。 (2)被災地民間企業へのヒアリング調査を実施する。外食産業や中食産業,あるいは,食品流通業者,それに農家などの生産者についてヒアリング調査を実施し,震災とそれらの企業との関連を検討する。調査地域は,宮城県内や前年度に調査した熊本地域に加え,台風や水害などの被災地域,もしくは,これらの常襲地域を訪問し,その地域における「食」へのアクセス,あるいは意識というものについて調査を行う。 (3)消費者へのアンケート調査を実施する。これは被災地の消費者について行うこととし,その行動原理を明らかにすることを目的とする。 (4)震災時の「食」を巡る消費者行動についてのモデルの作成と実証実験を行う。
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Causes of Carryover |
次年度への使用額が生じた理由としては,予想していなかった追加的な他の仕事が発生じたことが障害となり,当初計画していた宮城県内の調査等が実際には行えていなかったことが大きい。令和元年度には,そのような障害がないことから速やかに当初の計画に復するよう努め,当初の計画通りの実施を見込んでいる。
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