2020 Fiscal Year Annual Research Report
The mechanism design of family and village in rural Japan before the war : Using micro data of the farm household economy
Project/Area Number |
18K05863
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅見 淳之 京都大学, 農学研究科, 教授 (60184157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸 健 西武文理大学, サービス経営学部, 講師 (10721649)
草処 基 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90630145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 農家経済調査 / 戦前期 / 整理簿 / 交際費 / 冠婚葬祭費 / シグナリング / コミットメント / 操作変数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第三期農家経済調査個票のデータベースを用いると同時に、昭和20年、21年、22年、23年の整理簿のデータを再整理して日記帳の段階までさかのぼってデータベース化をはかり、同時に気象データを組み合わせることで、新たに戦前期農村農家のイエ・ムラの構造を明らかにした。特に冠婚葬祭と交際において「シグナリング」と「コミットメント」によってイエがムラの秩序を形成していることをゲーム論の枠組みのもと、計量分析によって実証した。整理簿は、農家経済調査結果票のもとになる日々の収支の日誌に当たるもので、これまでの研究では全く触れられていない。結果票の交際費と冠婚葬祭費の費目が実際にはいかなる収支記録から構成されているかを整理簿の原簿(日記帳)から拾い上げ、それをデータ入力業者に依頼してデータべー化を行い、冠婚葬祭と交際というこれまで社会学・人類学でしか扱われてこなかった領域を経済学から分析を行ったことにその貢献がある。成果を要約すると以下の通りである。 社会階層が高いほど交際費が増加することを示した。冠婚葬祭費については、偶発性もあり有意な結果は得られなかった。また降水量を所得の操作変数とした2段階回帰の結果、社会階層を問わず所得変動に依存しない交際費、冠婚葬祭費支出が観察された。さらに整理簿の分析により、香典、会費、餞別という周囲に顕示する消費と社会階層との正の相関が確認された。以上の結果から,昭和恐慌期、終戦直後期を対象としても,顕示的消費を通して能力の高い上層農が周囲に認知されて、階層が維持されていたと考えられる.また、交際費・冠婚葬祭費への恒常的な支出を通して、周囲からの信頼を得て,ツキアイが維持されていた。このように、社交的消費は戦前期の日本農村において、政治能力や信頼の正確な情報伝達に貢献し、その結果、農村社会の秩序が保たれていたといえよう。
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