2018 Fiscal Year Research-status Report
中赤外分光法(MIR)による乳脂肪酸組成は泌乳牛の乾物摂取量推定に活用できる
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18K05933
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺田 文典 東北大学, 農学研究科, 教授 (50355111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 健太郎 兵庫県立農林水産技術総合センター, 淡路農業技術センター, 課長 (20463408)
石川 翔 兵庫県立農林水産技術総合センター, 淡路農業技術センター, 研究員 (20734859)
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30194632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳牛 / 乳脂肪酸 / 乾物摂取量 / 中赤外分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳牛の乾物摂取量(DMI)の把握は飼養管理情報として重要であるが、実用に耐えうる精度の高い推定方法はいまだに開発されていない。そこで、本課題では、乳牛のエネルギー充足状況をよく反映するとされる乳脂肪酸組成を活用した、酪農現場で利用できる精緻なDMI推定法を提案することを目的とした。 2018年度に得られた成果は、次のとおりである。①172点のサンプルを供試して、中赤外分光(MIR)法による乳脂肪酸組成の推定精度についてガスクロマトグラフィー(GC)法を比較対照として検討した。その結果、C14以下の脂肪酸、C16、C18以上の脂肪酸では、GC法とMIR法の間で、それぞれ、0.67, 0.69, 0.79の相関係数が得られた。②自動搾乳装置を使用して得られた乳サンプル326点の脂肪酸組成をMIR法により分析した。主要な乳脂肪酸の日内変動は、乳量、乳脂肪率に比べて小さく、変動係数(CV)で3-8%程度であった。また、搾乳間隔の日内変動と各成分の日内変動との関係をCVで検討すると、相関の大きさは、乳量>乳脂率>乳タンパク質率、乳脂肪酸の順であった。③泌乳牛8頭を供試し、脂肪酸カルシウムの添加の有無が乳脂肪酸組成に及ぼす影響について検討したところ、乳脂率について増加する傾向が認められたものの、乳脂肪酸組成につては明確な差異は認められなかった。④ 泌乳最盛期(分娩後1-8週)の乳牛58頭271点の成績を用いて、飼養成績および乳脂肪酸組成(GC法)による乾物摂取量推定式を作成し、DMI(kg/日)=-1.86+0.670x分娩後週次(週)+0.307x乳量(kg) +0.821xC14:0(%) R2=0.858 RMSE=2.26 を得た。 以上のことから、飼養成績に基づく乾物摂取量推定式に乳脂肪酸組成を導入することにより、その推定精度が改善されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の成果として、①中赤外分光法(MIR)による乳脂肪酸組成の推定精度を、ガスクロマトグラフィー法を比較対照として明らかにした、②泌乳最盛期の牛群において、乳脂肪酸組成の導入による乾物摂取量推定精度の改善効果が示された、③今後導入台数の増加が想定される自動搾乳システム(AMS)において収集する乳サンプルの取り扱い方法を明確にした、等が得られており、研究の進捗状況は極めて順調である。とくに、泌乳最盛期のデータ収集については、当初予定の14頭に対して、58頭4ないし5ステージのデータを収集するなど精力的な取り組みを行っている。推定式の作成に関しても、給与飼料の影響評価などを一部前倒しで行っており、30年度の試験設計においてはこれらを活用する予定である。 2019年度計画の実施にあたって、MIRデータの収集については泌乳中後期のデータを重点的に収集することとしているが、収集体制は整備済みであり(小課題1)、AMSでのサンプル収集体制も特段の問題はない(小課題2)。このようにデータが前倒しで得られるものと想定されることから、データ解析を分担する小課題3においても研究実施を加速する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況はおおむね順調であることから、計画に沿って前倒しで研究を進める。 2019年度は、2018年度に引き続き、ガスクロマトグラフィー法と中赤外分光法の精度比較を実施する。この検討には前年度と異なる給与飼料条件の牛群の成績を用いることで、多様な条件下での再現性についても確認する。 泌乳最盛期のデータは、予定数を初年度に達成したことから、今年度は泌乳中後期の飼養成績の収集に重点を置き、脂肪酸組成によるDMI推定が全泌乳ステージを対象として活用できることを明らかにする。データ収集にあたっては2か月間隔で約40頭、点数で300点を目標とする。 乳脂肪酸組成に及ぼす給与飼料の影響評価については、昨年度実施した粗飼料の種類の影響評価を取りまとめるとともに、自動搾乳システムを使用した昨年と同様の試験設計で脂肪質飼料の影響評価を実施する。本小課題の実施に当たっては、前年度の脂肪酸カルシウムの添加試験を参考に、脂肪質飼料の種類、給与量を決定する。 DMI推定式の作成に関しては、収集したMIR法による乳脂肪酸データをもとに、重回帰分析、主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析を利用した推定式を試作する。また、乳脂肪酸を変数として導入することによる推定精度改善の根拠を明確にするため、ルーメン液性状と乳脂肪酸組成の関連性についても検討する。
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Causes of Carryover |
小課題1を担当する兵庫県立農林水産技術総合センターでは、研究計画に沿って年間を通じて乳牛の飼養試験を行っているので、次年度の予算交付までの間に試験実施に必要な物品等の購入に充てるため、必要額を繰り越した。なお、兵庫県立農林水産技術総合センターにおける翌年度請求額として、300,000円を予定しており、繰越額は月間必要額の凡そ1-2か月分に相当するものである。
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Research Products
(1 results)