2018 Fiscal Year Research-status Report
Epigenetic regulation of dedifferentiation-inducible genes mediated by macrophage during regeneration
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18K06184
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
板東 哲哉 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60423422)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 再生 / コオロギ / マクロファージ / TLR |
Outline of Annual Research Achievements |
フタホシコオロギの脚再生は、傷口の修復、再生芽の形成、位置情報の認識、再パターン形成の4段階からなる。我々は、昆虫マクロファージを枯渇させる実験から、マクロファージ枯渇個体では再生芽が形成されず、脚再生が阻害されることを見出した。マクロファージは自然免疫に関わることから、Toll-like receptor (TLR)シグナル因子の機能解析を行ったところ、TLRのいくつかや、TLRの下流ではたらくMyD88が再生に必須であった。TLRシグナルの活性化によりNFkB転写因子が核移行する。コオロギのNFkBはDorsal, Dif, Relishの3遺伝子にコードされ、再生に必要なのはDorsalとDifであった。TLRの活性化により昆虫サイトカインupdの発現が増加すること、ゲノム解析によりupdの上流領域にNFkB結合部位が存在することが分かった。マクロファージは活性酸素種を産生すること、H2O2産生にはたらくNADPH酸化酵素の機能を低下させたコオロギでも再生能が低下したことから、酸化ストレスに応答する転写因子Nrf2の機能解析を行ったところ、Nrf2を機能阻害すると致死となり脚再生は起こらなかった。マウスやヒトの幹細胞に高発現するLin28のコオロギホモログも機能解析を行ったが、Lin28は脚再生に寄与しなかった。これまでの研究成果をまとめた総説をInt J Dev Biol誌に発表し、脚再生におけるマクロファージの機能をまとめた論文を学術誌に投稿中である。 TLRシグナルが再生芽の形成に重要であったことから、コントロール個体とマクロファージ枯渇個体の再生脚を用いたエピジェネティック因子のスクリーニングを計画しており、次世代シーケンス解析のためのRNAのサンプリングを行っている。DorsalやDif、Nrf2と協調的にはたらく因子の単離を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コオロギ脚再生にマクロファージのはたらきが必須であることから、自然免疫関連分子に着目して研究を進めた。TLRシグナル経路の下流ではたらくNFkB転写因子のうち、DorsalとDifが再生を促進すること、TLRシグナルの活性化によって発現が増加する昆虫サイトカインupd遺伝子の上流にNFkB結合部位が存在することを見出した。また、創傷治癒過程で活性酸素種の産生が増加することが知られており、酸化ストレスに応答する転写因子Nrf2の機能も脚再生に寄与することが示唆された。これらの結果を踏まえ、次年度はRNA-seqを行ってNFkB転写因子やNrf2転写因子と協調的にはたらくエピジェネティック因子の単離を試みる。 TLRシグナルの機能やエピジェネティック因子の単離が困難な場合を考え、幹細胞で高発現することが知られているLin28の機能解析も進めた。Lin28遺伝子はGC含量が非常に高くクローニングが難航することが予想されたが、機能解析まで行うことができた。Lin28が脚再生に必須である場合は、Lin28と協調的にはたらくエピジェネティック因子の単離を試みる計画であったが、Lin28は脚再生に寄与しないことが分かった。今後は、神経系の幹細胞を制御することが知られているSoxNについても解析を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
コオロギが脚を切断されると、マクロファージがTLRシグナルや活性酸素種の産生を活性化させ、TLRシグナルの活性化によってNFkB転写因子DorsalとDifが、活性酸素種によって酸化ストレス応答転写因子Nrf2がはたらいて脚再生を促進することが示唆された。また予備的な実験から、マクロファージ枯渇個体の再生脚ではアセチル化ヒストンH3K9が減少していた。そこで今後は、DorsalやDif、Nrf2などと協調的にはたらくヒストンアセチル化酵素の機能解析を目指す。マクロファージ枯渇個体とコントロール個体の再生脚を用いた比較RNA-seq解析を行って、これら転写因子と強調してはたらくと考えられるヒストンアセチル化酵素を網羅的に単離する。 活性化したTLRシグナルは、昆虫サイトカインupdの発現を増加させる。updの遺伝子領域の上流にはNFkB結合部位が見出されたことから、NFkB結合部位の周辺では脚再生に伴ってヒストンH3K9アセチル化が亢進していると期待される。再生過程においてupdの上流領域ではヒストンテイルがアセチル化されるのか、TLRシグナルを不活性した状態でupdの発現を増加させると脚再生は促進されるのかなどを検討していきたい。
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Causes of Carryover |
理由:次世代シーケンス解析を行うにあたり、サンプル調製に時間を要したため。マクロファージを枯渇させたコオロギとコントロールのコオロギの再生脚からトータルRNAを抽出し、イルミナHiSEQ次世代シーケンサーを用いてRNA-seq解析を行うことを計画していた。RNA-seq解析を行うためには精製度の高いRNAが大量に必要である。これまで行ってきたRNA-seq解析では、大量のRNAを効率良く抽出するため、機能解析実験に用いる若齢幼虫期のコオロギよりも大きな後期幼虫期や成虫期のコオロギを用いてRNA抽出を行ってきた。今回は、より再現性の良い研究を行うために、若齢幼虫期のコオロギを用いてRNA抽出を行っている。若齢幼虫期のコオロギを用いてRNA抽出する場合は、コオロギの個体数を大量に確保する必要がある。しかし、飼育装置の予期せぬ不具合もあり、必要量のRNAを抽出することができなかったためRNA-seqを行うことができず、次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度に若齢幼虫期のコオロギを大量に確保してRNA-seq解析を行いたい。
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Research Products
(7 results)