2020 Fiscal Year Research-status Report
Epigenetic regulation of dedifferentiation-inducible genes mediated by macrophage during regeneration
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18K06184
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
板東 哲哉 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60423422)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 再生 / コオロギ / マクロファージ / TLR |
Outline of Annual Research Achievements |
フタホシコオロギの後脚を脛節で切断すると、失われた部分のみが付加的に再生される。これまでの解析から、コオロギの脚再生に伴って発現が増加するToll様受容体が3遺伝子あり、それらをRNAiにより発現低下させると再生能が低下することを見出している。これらRNAi個体の再生脚を電子顕微鏡を用いて観察したところ、傷口は修復されているが再生が開始されない、あるいは再生した組織が分節化せず融合した状態で形態形成異常を起こしていた。RNAi個体の再生脚における分裂細胞の割合を定量したところ、正常個体の約30%に低下していた。これらの個体では再生脚に分布するマクロファージの細胞数も約65%に減少していた。組織の損傷より引き起こされる細胞死に応答してマクロファージが傷口に遊走してサイトカインを放出することが再生に重要であった。一方で微生物の感染は再生に必須ではなかった。組織損傷時と細菌感染時では、状況依存的に標的遺伝子の転写活性化機構が異なると考えられる。 細胞死と再生の関連を調べるため、フォスファチジルセリン(PS)の露出を阻害するTMEM30Aホモログや、死細胞の認識に関わるCD36ホモログの機能を調べたところ、これらの遺伝子の発現を低下させたコオロギは再生能が低下した。細胞死は増加傾向であったが、細胞増殖は低下していなかった。 すなわち、細菌感染時と死細胞認識時(組織損傷時)では、Toll様受容体シグナルが標的遺伝子の発現制御を切り替えていると考えられる。状況依存的な転写調節にエピジェネティック因子が転写因子と協調的に関与すると考えられ、候補の転写因子の機能を解析した。機能解析の結果、初期応答因子やヒストンリジン脱メチル化酵素関連因子は再生に寄与していなかったが、血管形成誘導因子や低酸素応答因子は再生を促進することが分かった。これら因子とToll様受容体シグナルの関連の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年までの研究から、昆虫マクロファージに該当するプラズマ細胞がコオロギの脚再生を促進すること、プラズマ細胞に発現する3種類のToll受容体のうち2遺伝子の働きが重要であることを見出した。脚再生過程において、プラズマ細胞に発現するToll様受容体は、昆虫サイトカイン遺伝子の発現を促進するが抗菌ペプチド遺伝子の発現は促進しない。細菌感染時と脚切断時(組織損傷時)でTollシグナルにより発現制御される標的遺伝子が異なるエピジェネティックな機構を明らかにしたい。 脚切断時に標的遺伝子が活性化される機構にはアポトーシスが関連すると考え、アポトーシスした細胞の認識に関わる分子の機能解析を行った。アポトーシスする細胞では細胞表面にフォスファチジルセリン(PS)が露出するが、生細胞ではTMEM30AがPSの露出を阻害している。TMEM30Aの機能を低下させたところ、再生能は低下した。また、アポトーシスした細胞の認識にはCD36ホモログのCrqが関わっている。Crqの機能を低下させても再生能は低下した。いずれの機能低下個体においても、細胞増殖は変化しておらず、細胞増殖以外の機能が低下することにより再生能が低下したと考えられた。アポトーシス関連分子の発現低下個体において抗菌ペプチド遺伝子や昆虫サイトカイン遺伝子の発現変化を調べることで、標的遺伝子の切り替え機構を調べていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
細菌感染時と組織損傷時で発現制御される標的遺伝子が異なることから、Toll様受容体シグナルの下流で機能するNFkBと共役するエピジェネ因子が標的遺伝子の切り替えに関わっていると考えられる。細菌感染時には抗菌ペプチド遺伝子、組織損傷時には昆虫サイトカイン遺伝子の発現が活性化されると考えられるので、細菌感染時と組織損傷時に発現が変化するエピジェネ因子のスクリーニングを行う。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウィルス感染症の感染拡大により物流が悪化し、実験に必要な試薬の納品が大幅に遅延したため。 使用計画:細菌感染時と組織損傷時のサンプルを用いてエピジェネ因子の発現を定量化し、発現が変化する因子を同定する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Dkk3/REIC, an N-glycosylated protein, is a physiological endoplasmic reticulum stress inducer in the mouse adrenal gland2020
Author(s)
Fujita, H., Bando, T., Oyadomari, S., Ochiai, K., Watanabe, M., Kumon, H. & Ohuchi, H.
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Journal Title
Acta medica Okayama
Volume: 74
Pages: 199-208
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Fgf10-CRISPR mosaic mutants demonstrate the gene dose-related loss of the accessory lobe and decrease in the number of alveolar type 2 epithelial cells in mouse lung2020
Author(s)
Habuta, M., Yasue, A., Suzuki, K. I. T., Fujita, H., Sato, K., Kono, H., Takayama, A., Bando, T., Miyaishi, S., Oyadomari, S., Tanaka, E. & Ohuchi, H.
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Journal Title
PloS one
Volume: 15
Pages: e0240333
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] The role of clockwork orange in the circadian clock of the cricket Gryllus bimaculatus2020
Author(s)
Tomiyama, Y., Shinohara, T., Matsuka, M., Bando, T., Mito, T. & Tomioka, K.
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Journal Title
Zoological Letters
Volume: 6
Pages: 12
DOI
Peer Reviewed
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