2018 Fiscal Year Research-status Report
光化学系I光阻害におけるタンパク質品質管理機構の解明
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18K06290
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
加藤 裕介 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (10437569)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光合成 / 光阻害 / FtsH / チラコイド膜 / タンパク質分解 / 光化学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成電子伝達は連続した酸化還元反応であり、光を利用する2つの光化学系では非常に大きな酸化力、還元力が生成される。しかしながら、制御しきれない酸化力・還元力は同時に光化学系複合体に損傷(光損傷)を与える。光化学系IIは強光下で光阻害を受け、強光下での最大光合成を制限する。一方で、近年、低温や変動光下で起きる光化学系Iの光阻害が報告されてきている。光化学系I損傷メカニズムでは、鉄-硫黄クラスターが光損傷の初発標的部位であることが示唆されているが、周辺タンパク質の損傷ならびに光化学系全体の品質管理メカニズムは多くが未解明である。光合成装置を構成するタンパク質の損傷、分解についての包括的に解析するために、本年度はLC-MS/MSによるチラコイド膜上の光合成関連タンパク質量の変動を定量的に解析する基盤構築を試みた。非標識培地と15Nによる標識培地で生育させたシロイヌナズナの芽生えを用いて、光化学系II複合体、シトクロームb6f複合体、光化学系I複合体, 集光性クロロフィルタンパク質複合体と私達が解析を続けているFtsHタンパク質分解酵素の各タンパク質の定量的解析が可能かどうかを検討した結果、計26タンパク質を個別に定量することが可能であった。次に核および葉緑体の新規のタンパク質合成を阻害した条件で変動光処理を行い、光化学系I阻害時に分解が起きるタンパク質を検討した結果、一部サブユニットで減少が認められた。しかし、成熟葉を用いての予備実験と異なる点もあり、さらなる解析が必要である。一方、FtsH欠損変異体で変動光下の光阻害が増大していることが確認され、FtsHが光化学系II修復サイクルのみでなく、広範な光損傷に対して重要な役割を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光損傷による光化学系タンパク質複合体の包括的解析に必要な定量的LS-MS/MSのおよその基盤ができた。注目する光化学系Iでは、PsaI, J, K以外の同定はできており、分解ならびに損傷の全体像を捉えるために十分と考えられる。また想定どおりFtsHプロテアーゼの関与が示唆され、次年度以降さらなる解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を提案する段階での予備実験では、シロイヌナズナの成熟葉を用いて光阻害、一部タンパク質の減少をウエスタン解析で確認した。しかし、定量的LC-MS/MSによる包括的解析では15Nを使用する制約上、培地で育てた芽生えを用いる必要があった。芽生えにおいても変動光で光化学系Iの光阻害が起きることは確認しているが、タンパク質の減少では予備実験と異なる点もあった。この原因としてタンパク質合成阻害剤が効率的に働いていない可能性が考えられ、芽生えでの実験条件を再度検討した上、包括的にタンパク質分解状態を解析する。また、光化学系I複合体状態の解析に着手する。光化学系I複合体の可溶化にはdigitoninが必要であるが、digitoninによる可溶化は技術的習熟が必要な面がある。同様にdigitoninによる可溶化が必要なチラコイド膜画分の分画にglyco-diosgeninが有用であることを昨年度までに確認しており、光化学系I複合体の可溶化にdigitoninの代わりとしてglyco-diosgeninの使用を検討し、解析につなげる。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Targeted proteome analysis of microalgae under high-light conditions by optimized protein extraction of photosynthetic organisms.2019
Author(s)
Toyoshima, M., Sakata, M., Ohnishi, K., Tokumaru, Y., Kato, Y., Tokutsu, R., Sakamoto, W., Minagawa, J., Matsuda, F., Shimizu, H.
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Journal Title
J. Biosci. Bioeng.
Volume: 127
Pages: 394-402
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Structure and molecular characterization of diadenosine polyphosphate hydrolase in brachypodium distachyon2018
Author(s)
Tanaka, M., Iamshchikov, I., Kato, Y., Sabirov, R., Gusev, O., Sakamoto, W. and Sugimoto, M.
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Journal Title
J. Plant Biochem. Physiol.
Volume: 6
Pages: 220
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Effects of oxidative post-translational modification in PSII repair.2018
Author(s)
Kato, Y., Dogra, V., Li, M., Kuroda, H., Takahashi, Y., Kim, C. and Sakamoto, W
Organizer
International Symposium on Photosynthesis and Chloroplast Biogenesis
Int'l Joint Research
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[Presentation] Loss-of-function mutants of LHCI subunits exhibit increased chlorophyll accumulation in rice2018
Author(s)
Yamatani, H., Takami, T., Kato, Y., Tanaka, A., Sakamoto, W., Kusaba, M
Organizer
International Symposium on Photosynthesis and Chloroplast Biogenesis
Int'l Joint Research
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