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2022 Fiscal Year Research-status Report

ヤドカリの殻交換は捕食リスクに便乗した感覚トラップにより促進される?

Research Project

Project/Area Number 18K06416
Research InstitutionWakayama University

Principal Investigator

古賀 庸憲  和歌山大学, 教育学部, 教授 (50324984)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 吉野 健児  国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (40380290)
Project Period (FY) 2018-04-01 – 2024-03-31
Keywordsヤドカリの殻闘争 / 捕食リスク
Outline of Annual Research Achievements

ヤドカリは脱皮成長に伴い新しい殻が必要となり、主要な入手手段である殻交換は仕掛ける側がより良い貝殻を得るための闘争行動である。攻撃個体が自分の殻を相手の殻に打ち付ける打突行動を繰り返す。打突は相手の身体に直接ダメージを与える攻撃ではないが、被攻撃個体は打突に耐えきれなくなると殻から出てくる。攻撃個体は相手の殻を素早く占有するが、被攻撃個体は、しばらく待たされる等し、柔らかく無防備な腹部を曝すことになる。被攻撃個体はなぜ危険を冒して自分から殻を出てしまうのか?
この問いに対し、打突により殻に与えられる衝撃が捕食者による貝殻破砕時の衝撃と類似しており、殻が破砕される前に殻から逃避する、という捕食回避行動に便乗した、攻撃する側による感覚トラップであるという仮説を私は考えた。そこで、実験的に捕食リスクを認知させたヤドカリ個体が、打突により容易に降参するかを調べることにより、この仮説の検証を試みている。
2020年度までに、テナガツノヤドカリとユビナガホンヤドカリが、捕食リスクを認知していること、ホンヤドカリが捕食者イシガニに殻を破砕される前に、殻闘争時と同様に殻から飛び出すことにより生存の機会が高まること等が示唆された。2021年度までに、ホンヤドカリの殻闘争実験では、捕食リスクが低い場合、被攻撃個体は攻撃個体に打突されてもなかなか殻を諦めないのに対し、捕食リスクが高い場合には比較的容易に諦めて殻から出る傾向が見られた。
2022年度には、ユビナガホンヤドカリの殻闘争実験でも、捕食リスクが高い場合には攻撃個体の少ない打突で被攻撃個体が殻を諦めやすく、また、1秒あたりの打突が多いほど殻を早く諦める傾向を見いだした。すなわち、捕食リスクが被攻撃個体の打突に対する耐性を弱め、殻交換の促進に寄与していることを示唆する知見が、ホンヤドカリに加えユビナガホンヤドカリでも得られた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

実験下で殻交換の観察例数を増やすためには、殻交換を仕掛ける側の個体に動機付けを行い、殻を巡る闘争を誘発させる必要がある。海外で盛んに研究されているPagurus bernhardusおよび日本で殻交換の研究報告のあるホンヤドカリP. filholiでも、人為的に小さめの殻を強制的に与えたり、現在使用している殻を一部破損したりする等して、攻撃の動機付けを行っている。
2020年度までは、殻交換の研究例はないが、それ以前から私たちが研究を行っていた、干潟に生息するテナガツノヤドカリとユビナガホンヤドカリを主な対象として実験を行ってきた。上記先行研究の2種とは、ユビナガホンヤドカリは同属の近縁種であり、テナガツノヤドカリは科が異なる。今回それら先行研究を模倣し実験を行なったものの、テナガツノヤドカリはホンヤドカリのように高頻度では攻撃を仕掛けず、また、攻撃して闘争がエスカレートしても殻交換には至りにくいことがわかった。ユビナガホンヤドカリも、テナガツノヤドカリほどではないものの、ホンヤドカリに比べるとデータの蓄積が容易ではなかった。
そこで、2020年度からは国内で研究例のある、磯に生息するホンヤドカリを実験対象に新たに加えた。磯にもフタハベニツケガニなどだけでなく、強力な捕食者であるイシガニなどガザミ類が見られるため、仮説検証の材料として問題はない。しかし、2020年度以降、新型コロナウィルス感染症蔓延のため、実験を担う学生に加え研究代表者自身も研究にかける時間が大きく減少した。それでも、補助事業期間の延長により、2021年度のホンヤドカリに加え、2022年度のユビナガホンヤドカリを用いた実験においても、データの蓄積が進み、仮説の支持に向け期待される結果が得られた。確証を得るために、方法を一部改善しデータを蓄積する必要がある。そこで今回も、補助事業期間延長の承認申請を行った。

Strategy for Future Research Activity

2021年度には、ホンヤドカリを用いた殻交換実験で、仮説を支持する可能性のある結果が得られたものの、同時に攻撃個体の武器サイズが相対的に小さいほど殻交換が成立しやすい傾向も見られた。後者は、資源を巡る闘争における予測およびヤドカリ類の先行研究の結果とは一致しないため、原因を究明し必要であれば方法を改善すべきであると考えられた。一般に、体サイズの大きい個体ほど武器サイズも大きく、ヤドカリ類でも体サイズとしての前甲長が大きい個体ほど武器サイズとしての鉗長も大きい。しかし、今回攻撃個体に選んだ個体の一部に、体サイズの割りに武器サイズが相当に小さい個体が混在していた。これは、ヤドカリ類では闘争や捕食リスク回避時に鉗脚を自切することがあり、脱皮による再生途中の場合に起こりうる。そこで、2022年度には実験個体の選別に一層の注意を払い実験を行った。現在データの蓄積と解析の途中であるため、2023年度も実験を継続する。したがって、ホンヤドカリを用い、改善した方法でデータを蓄積することにより、より信頼性の高い結果が得られると期待される。

Causes of Carryover

新型コロナウィルス感染症蔓延の影響のため、参加した学会がオンラインであったりして、旅費を使用しなかった。実験を十分には行えず、消耗品の購入が少なくなった。また、論文執筆が遅れており、英文校閲費などを使用しなかった。次年度は、対面で実施される学会や研究会があれば赴き、実験に必要な物品を購入する。また、執筆を完成させ、英文校閲費やオープンアクセス費として使用する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2023 2022

All Presentation (3 results)

  • [Presentation] ホンヤドカリPagurus filholiの殻闘争は捕食リスクの影響を受けるのか?2023

    • Author(s)
      中西亜津沙・古賀庸憲・吉野健児
    • Organizer
      第70回日本生態学会大会
  • [Presentation] ユビナガホンヤドカリPagurus minutusの殻闘争行動は攻撃型モデルであり、捕食リスクの影響を受けるのか?2022

    • Author(s)
      石上裕之・西山祐典・古賀庸憲
    • Organizer
      南紀生物同好会2022年研究発表大会
  • [Presentation] ホンヤドカリPagurus filholiの殻闘争行動は攻撃型モデルであり、捕食リスクの影響を受けるのか?2022

    • Author(s)
      中西亜津沙・宮西芳幸・中幡俊紀・古賀庸憲
    • Organizer
      南紀生物同好会2022年研究発表大会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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