2019 Fiscal Year Research-status Report
生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークの多面的解明
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18K06448
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
清水 悠路 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員准教授 (40569068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 隆浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40284674)
山梨 啓友 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (60709864)
小屋松 淳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90714212)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 高血圧 / 歯周病 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
「生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークを解明」を目的に、2018年に引き続き、2019年には五島市健診受診者1220名、佐々町健診受診者1143名に対して動脈硬化検診を実施した。 この結果を用いた解析で、HTLV-1感染は歯周病増悪因子となるが、その関係に血管修復過程としての動脈硬化(Environ Health Prev Med. 2019)や、造血能(Environ Health Prev Med. 2019)が影響を与えることを認めた為、論文報告した。また、過去データと突合作業を行い、観察研究も行った。結果、器質的な動脈硬化の伸展には、造血幹細胞(CD34陽性)が必要である事が判明した(Sci Rep.2020)。また、高齢者において動脈硬化の形成が高血圧予防に寄与している可能性が示唆される結果を得たため、論文報告した(Environ Health Prev Med. 2019)。これらの研究結果は、我々の研究対象である血管リモデリングネットワークの解明に繋がるものである。 さらには、2018年に五島健診を受診した60-89歳の男性、163名を対象にシスタチンC、BMP及びアンギオポイエチン2の測定を行っており、これらの測定結果を用いて検討を行った。測定項目のうち、新生血管の活動性を示唆し得る因子であるアンギオポイエチン2において、有意に負の関係を動脈硬化との間に認めた。この結果は動脈硬化の伸展には新生血管の存在は重要であると報告されているものの、新生血管の存在は酸化的ストレスを軽減させることにも貢献するため、負の相関が認めらえたと考えられ、本研究結果も本研究の主目的である「生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークを解明」することに繋がるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究における主目的の達成には、まず、血管リモデリングネットワークの大枠の把握が必要であるが、その検討において、2019年の時点で既に、多くの新しい知見を見出し、論文発表していた。 今回さらに我々は、本研究で新たに得た健診データを用いて、造血幹細胞が動脈硬化の伸展には必要不可欠であること(Sci Rep.2020)。また高齢者において、動脈硬化の伸展はむしろ高血圧予防に寄与している可能性があることを認めた為(Environ Health Prev Med. 2019)、論文報告した。これらの結果も、血管リモデリングネットワークの大枠の把握に有用な知見である。また、2019年より、高齢者において生活水準低下を来す因子である歯周病に焦点をあて検討を行っていた。特に先行研究においてHTLV-1感染は、歯周病の増悪因子として報告されているが、我々は造血能を示唆する網状赤血球や動脈硬化の存在が、歯周病とHTLV-1感染の関係に影響を与えることを見出したため、論文報告した(Environ Health Prev Med. 2019)。これにより、「生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークの解明」に繋がる知見の一部を既に報告できた。 また、60-89歳男性の2019年健診受診者を対象に、血管新生に必要不可欠なアンギオポイエチン2の測定を行っているが、これを用いた解析においても我々は、アンギオポイエチン2が動脈硬化と有意な関連があることを見出している。しかしながら、まだ研究対象者数が163人と少ないため、2020年にはアンギオポイエチン2の測定対象者を増やし検討を行う必要がある。しかしこれらの解析結果は、我々が現在行っている手法が、本研究の主目的を達成する方法として有効であることを示唆している。 従って、現在の研究推移状況は、当初の計画以上に伸展していると判断できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究目的である「生活水準低下に及ぼす血管リモデリングネットワークの解明」の更なる達成のためには多角的な検討が必要である。 その為現在は、2018年、2019年の当該動脈硬化検診受診者に対し、研究対象である動脈健診受診者の一般的な健診項目に加え、生活水準低下に関連する因子(筋力低下・筋量低下・歯周病・歯牙欠損・慢性腎臓病・低栄養などの)データ、動脈硬化指標データを採取、データクリーニングを行った後、突合し既に解析を行っている。2020年においても、同様に当該動脈硬化検診受診者を対象に上記データ採取を行い、データクリーニングの後、データを保管し更なる解析に備える。 また、2018年度健診受診者のうち60-89歳の男性の血液サンプルを対象に、シスタチンC、BMP及びアンギオポイエチン2の測定を行い、データクリーニング後に上記で得たデータと突合を行った。それらのデータを用いて、測定項目を絞るための準備解析を行ったところ、アンギオポイエチン2の測定結果が、本研究において有用であるという結果を得るに至った。従って、2020年においても、当該健診受診者を対象にアンギオポイエチン2の測定を増やし、さらなる解析に備える。 ここで得た新しい知見は、2018年・2019年同様に、国内外の関連学会での発表はもとより、国際誌においての論文発表も目指す。また、本研究は定期住民健診受診者を対象として行っている為、2020年以降も動脈硬化検診は定期的に受診していくことが想像される。そのため、一般健診項目に加え、動脈硬化検診項目のデータは、毎年蓄積されていくことが期待される。これらのデータも同様にデータクリーニングを行い、専用のデータベースに保管し、追跡研究への発展をめざす。
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Causes of Carryover |
理由:研究が効率的に進んだ結果、少額ではあるが、次年度使用が生じた。 使用計画:研究遂行上必要な、物品費や旅費に使用する計画である。
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