2019 Fiscal Year Research-status Report
Dearomative Diels-Alder Reaction of Arenes with Unactivated Alkynes
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18K06563
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
沖津 貴志 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (50441209)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Diels-Alder / 脱芳香族化 / タンデム反応 / アルキン / ナフタレン / チオフェン / 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香環をジエンとして直接利用する脱芳香族的 Diels-Alder (以下DA)反応は、架橋多環式化合物を合成する上で魅力的な手法ではあるが、ジエンとして利用可能な芳香環が反応活性なアントラキノンやフランなどに限られることや、求ジエン体としてベンザインのような活性アルキンを用いなければならないなど制限がある。アントラキノンに比べて反応性が低いナフタレンをジエンとして用いる不活性アルキンとの分子内DA 反応は数例報告されているが、収率の低さや基質適用例の少なさにおいて課題が残り、系統的な研究は未だになされていない。共鳴エネルギーが高いチオフェンも同様に、これをジエンとするDA反応は高温高圧条件が典型である。私は、これまで報告例のない、ナフトールをジエンとして直接利用する脱芳香族的 DA 反応が、「適切な基質」を設計すれば不活性アルキンとの間でも首尾よく進行することを偶然発見した。そこで今回、芳香環と不活性アルキンの分子内 DA 反応の一般性を解明することを目的として、「適切な基質」の骨組みをもとに、先に記載したナフトールよりも原料合成が容易かつ報告例が皆無の (1)メトキシナフタレン、報告例がほとんどない(2) チオフェン、の2種類の芳香環をジエンとする不活性アルキンとの分子内DA 反応の開発を目指した。さらに、「適切な基質」の骨組みに捉われない、新たな基質設計による芳香環と不活性アルキンの分子内 DA 反応についても検討することで、本コンセプトの大幅な拡張を実現する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目(1)については反応条件を変えることで、脱芳香族化された架橋型三次元化合物と多環性二次元化合物を作り分けることに成功した。すなわち、脱芳香族的 DA 反応の後、脱メチル化と逆DA反応のどちらの反応様式で進行させたいのかを自在に選択できる反応条件を見出した。しかも、どちらの場合でも高収率で目的の化合物を与えただけでなく、既に報告されている反応系(230℃)に比べ低温(140-170℃)でも反応が進行することを明らかとした。なお、メトキシナフタレンの代わりにアニソールを基質とした場合には、反応は全く進行しないことを確認している。項目(2)については、脱芳香族的 DA 反応による硫黄架橋型多環性化合物が不安定であることを予備実験で把握できたため、これを高反応性中間体として捉え、続く脱硫反応による反応の収束を試みた。鋭意検討の結果、脱硫剤として特定のホスフィンを予め添加しておくことにより、分子内DA 反応/脱硫反応のタンデム反応が一挙に進行し、概ね90%以上の収率で多環性二次元化合物を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で記載したとおり各々の反応条件を確立することができたため、今後は基質一般性の検討に重点を置く。また、フランをジエンとする分子内DA 反応が本反応系に適用可能かを検討する。これと同時に、「適切な基質」の枠組みに捉われない、新たな脱芳香族的 DA 反応の開発も行う予定である。
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