2018 Fiscal Year Research-status Report
基本転写因子によるRNAポリメラーゼIIの構造変換の分子機構の解析
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18K06654
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田中 亜紀 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (50432109)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNAポリメラーゼ / 基本転写因子 / TFIIE |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではRNAポリメラーゼIIの構造変換を制御する因子が、開始から伸長への移行段階でどのように入れ替わり、転写活性を制御しているのか解明することを目指す。 実施した一つ目の項目として、ヒト組換え体clamp(rClamp)を用いた結合実験を行っている。我々は以前の解析でTFIIEとTFIIBが転写開始から伸長への移行段階で協調的に機能することを報告している。本解析でrClampとTFIIEの結合はTFIIB存在下でより強く結合しており、転写伸長因子Spt5を添加することにより、rClampとTFIIBの結合が阻害されて、TFIIEがrClampから解離しやすくなることが明らかとなった。さらに実施した2つめの項目として、クライオ電子顕微鏡により転写初期段階のPol IIと基本転写因子からなる複合体の構造が報告されており、CC(closed complex), OC(open complex), ITC(initiation transcription complex)を比較するとTFIIEとPol II clampの結合部位が異なっている。転写初期段階における基本転写因子によるPol IIの構造変換による活性制御機構を調べるため、これらの構造を参考に点変異体を作成した。今後、これらの変異体を用いた転写活性の評価と因子間の結合実験を行い、Pol IIの構造変化に与える基本転写因子の役割を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト組換え体clamp(rClamp)を用いた結合実験によるclampを制御する因子の結合様式の検討については計画通りである。またクライオ電子顕微鏡により転写初期段階のPol IIと基本転写因子からなる複合体の構造を参考にした変異体を作成したが、これらの変異体を用いた転写活性の評価と因子間の結合実験の準備を進めているところであり、実験計画からやや遅れている点である。またTFIIHによるTFIIEのリン酸化が本解析の鍵となると考えているが、リン酸化標的候補のアミノ酸に変異を導入したTFIIE変異体を作成したがin vitroリン酸化アッセイ等によるTFIIEのリン酸化による転写活性への影響の評価が行えておらず、実験計画が遅れている点である。
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Strategy for Future Research Activity |
rClampおよびclampを制御する因子の変異体を用いて結合に必要なアミノ酸の同定に関しては、rClamp点変異体およびTFIIE点変異体の大腸菌発現ベクターが作成できたので、タンパク発現と精製を行い、結合実験により相互作用に重要なアミノ酸を同定する。TFIIHによるTFIIEのリン酸化部位の同定に関しては、TFIIEがPol IIから解離する機構の一つとして、我々はTFIIHによるTFIIEのリン酸化が関わると考えている。我々がTFIIHによるTFIIEのリン酸化を調べた結果、いくつかの標的部位の候補が見つかった。そこでそれらのアミノ酸の変異体を作成して、リン酸化部位を同定する。TFIIHによるTFIIEのリン酸化がClamp結合に及ぼす影響と転写活性の評価に関しては、TFIIEのリン酸化がrClampへの結合に与える影響を結合実験により検討する。さらにTFIIHによるTFIIEのリン酸化が転写に与える影響を、in vitro転写アッセイで転写活性を評価する。Immobilized template PIC captureアッセイによる因子の集積の評価に関しては、鋳型DNAの末端にビオチンを結合させ、ストレプトアビジンビーズに結合させて、精製したPol II, 基本転写因子または転写伸長因子を添加したimmobilized template PIC captureアッセイを行う。反応系に添加する因子に変異体を用いること、また反応系に因子を添加するタイミングを考慮することで、プロモーターでの因子の集積を評価する。
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Causes of Carryover |
平成31年2月1日から令和元年9月30日まで産前産後の休暇および育児休業を取得することにより次年度使用額が生じた。研究再開は令和元年10月1日からとなり、研究再開後は計画にしたがって研究を進め、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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