2018 Fiscal Year Research-status Report
消化管平滑筋の多様性を生み出す細胞間相互作用および分子機構の解析
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18K06845
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
石井 泰雄 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (20582430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10367089)
浦瀬 香子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40349642)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 消化管運動 / 平滑筋 / 発生 / 自律神経系 / Eph / ephrin |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管運動の異常によって起こる疾患の中には、胃食道逆流症やヒルシュスプルング病のような明確な運動の異常を示すものから、感情的ストレスの影響のように巨視的な異常を伴わないものまで、さまざまなものが含まれる。消化管運動は消化管の壁をとりまく平滑筋の収縮と弛緩によって引き起こされる。その収縮と弛緩は自律神経系やカハールの介在細胞によって制御される。平滑筋およびその運動を制御するシステムの発生に関する新たな知見は、消化管運動に起因する諸疾患の理解や、それらの治療法の開発の基盤となりうる。 消化管の壁を構成する平滑筋は、細胞の並ぶ向きの異なるいくつかの層をなし、その分布は食道、胃、腸の間で互いに異なる。平成30年度は、細胞間の情報伝達を担う分子をコードするEph/ephrin遺伝子群のニワトリ胚消化管における発現パターンを、in situハイブリダイゼーション法を用いて網羅的に解析した。その中で特に興味深い発現パターンを示したEphA3に関して、in situハイブリダイゼーションと平滑筋マーカーに対する抗体による二重染色を行った。その結果、食道と胃では主に粘膜固有層および粘膜筋板で、小腸と大腸では主に輪走筋で発現することが明らかになった。また、自律神経系の一部の細胞で、EphA3タンパク質と相互作用すると考えられているephrinA2およびephrinA6の遺伝子発現が認められた。これらの結果は、胚期の消化管平滑筋が、発現する遺伝子の異なるいくつかのタイプから構成されているという考えを支持している。また、平滑筋の多様化およびそれに対応した自律神経系の成立過程にephrin-Ephシグナル伝達を介した細胞間相互作用が関与している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、以下3つの仮説の検証を行う。 [仮説1] 胚期消化管平滑筋は、分子レベルにおいて多様である。 [仮説2] 発生初期の周囲環境が、平滑筋に「個性」を与える。 [仮説3] 平滑筋は、運動制御システムの構築に必要な位置情報を提供する。 平成30年度は、EphA3およびephrinAファミリーメンバーの発現パターン解析をニワトリ胚を用いて行い、[仮説1] を支持する結果を得た。現在、論文投稿の準備を進めている。他のEph/ephrinファミリーメンバーの発現についてもデータが得られており、ほ乳類胚を用いた解析とともに、今後、論文発表に向けたより詳しい解析を行う予定である。遺伝子導入法の条件検討も行い、より安定した結果が得られるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、これまでに得た解析結果をもとに、以下を実施する予定である。 1. 遺伝子発現パターンのデータを取りまとめ、論文発表を行う。マウス胚を用いた解析も行う。 2. [仮説2]の検証を行う。培養実験やウズラ-ニワトリキメラ胚の作成および解析を行い、周囲組織のもつ位置情報が平滑筋の発生にどのような影響を与えるかを明らかにする。 3. [仮説3]の検証に向けた準備を進める。強制発現用プラスミドを作成し、遺伝子導入実験を始める。
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Causes of Carryover |
当初、妊娠マウスおよび抗体を用いた発現解析を平成30年度に行う予定であったが、ニワトリ胚の解析結果をもとに解析の対象をより重要な分子に絞り込むため、平成31年度に行うこととなった。また、平成31年度後半から、多くの時間を要する実験発生学的手法による解析が中心となる。実験をより効率よく行うため研究補助員を1名雇用する計画であり、それに対して助成金の一部を充てる予定である。
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