2020 Fiscal Year Research-status Report
消化管平滑筋の多様性を生み出す細胞間相互作用および分子機構の解析
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18K06845
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
石井 泰雄 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (20582430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10367089)
浦瀬 香子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40349642)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 発生 / 消化管 / 平滑筋 / 自律神経系 / Eph / ephin |
Outline of Annual Research Achievements |
口から摂取した食物は、消化管壁に存在する輪走筋と縦走筋によって肛門に向かって運ばれる。これらの筋層の配置と運動は器官ごとに少しずつ異なる。チロシンキナーゼ受容体をコードするEphA3の発現は、腸の輪走筋で検出されるが、縦走筋や食道および胃の輪走筋では検出されない。この発現パターンは、消化管の平滑筋が分子レベルで多様であることを反映している。一方、この結果は、必ずしもEphAシグナル伝達が腸輪走筋特異的に活性化されることを意味しない。なぜならば、EphA受容体とそのリガンドephrinAには多数のメンバーが存在し、それらがさまざまな組み合わせで相互作用しうるからである。そこでわれわれは、ニワトリで同定されている全7種類のEphA受容体 (EphA1, EphA2, EphA3, EphA4, EphA5, EphA6, EphA7)および3種類のリガンド (ephrinA2、ephrinA5、ephrinA6)の発現をin situハイブリダイゼーション法を用いて解析した。パラフィン切片を用いた二重染色もあわせて行い、以下の結果を得た。1) 解析したEphA遺伝子のうち消化管壁で強い発現を示すものは、EphA3のみであった。2) 平滑筋層ができはじめる6日胚の消化管壁の広い範囲で複数のephrinA遺伝子の発現が検出された。3) 分化した神経叢のニューロンでephrinA2遺伝子の発現が検出された。これらの結果は、EphA-ephrinAシグナル伝達が、a) 腸の輪走筋で特異的に活性化されうること、b) 消化管運動を制御する神経系の発生にも関与しうることを示している。 また、ウズラ-ニワトリキメラ解析により、胃と腸の境界が明瞭な4日胚の腸の中胚葉であっても、食道や胃の形成領域に移植されると、EphA3陽性の輪走筋を作らないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニワトリ胚消化器官におけるEphA3およびephrinAリガンド遺伝子群の発現解析において、さらなる発現細胞の同定が必要であることが判明したため、ニューロンやグリア細胞のマーカーとの二重染色を行った。このデータが加わることにより、それまでに導きだされた結論がより説得力のあるものとなった。 ウズラ-ニワトリキメラ解析では、実験の成功率が低い、あるいは不安定であることが、研究を効率的に進める上で大きな課題となった。しかし、8月から雇用を開始した研究補助員の助けや実験手法の改良により、それぞれの実験について論文に必要な例数をそろえられるようになった。今後、培養実験を行い、Hox遺伝子などの発現をマーカーに用いることにより、平滑筋の分化に影響を与える組織間相互作用を明らかにする道筋が見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
ニワトリ胚消化器官におけるEphA3およびephrinAリガンド遺伝子群の発現解析の結果を論文にまとめて、今年度の前半に投稿する。必要に応じてほ乳類胚の解析結果を追加する。 ウズラ-ニワトリキメラ解析の結果は、平滑筋の器官特異的分化が周囲環境の影響を受けることを示している。この周囲環境に関してさらに解析を進め、本年度中に学会発表と論文発表を行う。周囲環境を生み出す組織の候補として、内胚葉、近接する中胚葉、神経堤細胞が考えられる。それらのうちのどれが重要かを明らかにするため培養実験を行う。培養が可能なのは数日間に限られるため、消化管中胚葉の領域特異性の指標として、発生の早い時期から発現するHox遺伝子やWnt遺伝子などの発現を用いる。
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Causes of Carryover |
4月から研究補助員を雇用する予定であったが、コロナウイルスの蔓延の影響を受け、雇用は8月からとなった。また、大学の組織改革の結果、研究・教育以外の業務が大幅に増加し、研究が遅れる要因となった。
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Research Products
(1 results)